テントの路上結婚式、来場者2000人 スンダの伝統にこだわり 義妹夫婦
「結婚式」。それは国を問わず、社会の風習や宗教、そして時代を反映する人生の大イベントだ。実は妻の妹、ヌルハリマ・サディアさん(30)が今月17日、大学時代に知り合ったエリ・ジュリアントさん(31)と半年の交際を経て結婚。多くの邦人も住む地元のチカランで、スンダ伝統の路上結婚式を挙げた。そこで当日の様子を紹介し、祝福を読者の皆さまと共有できれば嬉しい。
経済発展に伴い結婚式はインドネシアでも年々、豪華さを増している。多くの招待客にお披露目しようと専門のコーディネーターに頼るホテルでの結婚式は時代のトレンド。しかし、当人の経済力によって状況は異なり、町の公民館を利用するケースも多く、私たちの場合は、路上にテントを張って隣近所も交えてと2人の門出を祝う伝統的なスタイルにこだわった。
と言うのは簡単だが、すべて手作り。テント選びから始まり、料理の算段、そしてなにより新郎新婦の衣装選び。やることは山ほどある。しかも、新婦の実家を会場とするのが慣わし。新郎が新婦を迎えに行くという意味もあるが、新婦の育てた両親に新郎側が敬意を表する意味がある。
そこで問題になるのは予算だが、今回の披露宴は計8000万ルピア。ホテルの方が安上がりではないかという新郎。いやいや、伝統にこだわりたいと新婦。意見のすれ違いもあり、サディアさんの苛立ちは頂点に達し、「もう結婚式なんてキャンセルしたい」と言い出す日もあった。
9月17日。結婚式当日を迎えた。爆竹を打ち鳴らして新郎が到着。結婚式は宗教上の夫婦として認める儀式から始まる。日本の婚姻届に相当する手続きとは別に、インドネシアでは宗教的に夫婦関係を承認される必要がある。
儀式は証人となる宗教省のイマム(司祭)2人の元で進められる。まず結納金に相当する「マフル」を金の42㌘のインゴットで新郎が贈った。そして夫婦としての誓いの言葉を3回繰り返すが、2人とも緊張の極地。新郎が噛んでしまい、儀式は進まないが、これは純真さの証明でもあり、会場を和ませた。
そしていよいよ、イマムから結婚証明書が渡されると夫婦は晴れて正式な夫婦に。お互いの両親の前でひざまづき、感謝の言葉を交わして両親から祝福を受ける。ここでMCの祝福の言葉も涙声に。思い出も脳裏をよぎり、会場は感謝と祝福の涙に濡れた。
しかし、ここまで来ると2人は夫婦として振る舞う。キスを交わす場面では「濃厚なキスは夜にしてね」といった冗談も飛び出した。親族50人。招待客は約2000人。会場はお祭りムードに沸いた。サディアちゃん、Selamat atas pernikahan kalian(結婚おめでとう)!(文・センディ・ラマ、写真・長谷川周人)