対面訓練から国際連携 陸自・PKO訓練 海外派遣の大切さ実感
国連平和維持活動(PKO)に向けた工兵要員の能力強化を図る国連の三角パートナーシップ・プログラム(TPP)。西ジャワ州スントゥールの山中にある国軍PKOセンター(PMPP)には、陸上自衛隊から派遣された教官団24人とアジア6カ国から集まった工兵要員が交流を深める姿があった。
高速道路を降りて急勾配の坂道を登ると、国軍の関連施設が次々と目に入ってくる。施設は広大な敷地を有し、国軍が持つ強大な影響力を垣間見る思いをする。
国軍のエスコートでPMPPの正門をくぐると、陸自隊員と各国工兵の生活エリアに到着した。バンガロータイプの宿舎は平屋建て。2LDKを1人で専有する。
取材に協力してくれたのは船木祐作3等陸曹(32)。与えられた部屋は冷房完備でWiFiも使える。船木3曹は初めてのインドネシア生活を「快適に過ごさせてもらっている。食事が思っていたより美味しい」という。ただ、各国工兵を通訳を介して指導するが、やはり言語の壁はある。「それでもコミュニケーションは取れる。それがありがたい」。任務を通じて繋がる心に意義を感じていた。
訓練期間は6月下旬から1カ月あまり。毎日の食事は任務の成否を左右することもある。この日の朝食はビュッフェスタイル。ナシゴレンや卵を魚のすり身に包んで揚げた「エカド」などが並んだ。
PMPPの食堂で勤務歴7年というシティさん(39)は「焼きそばや巻き寿司が喜ばれるが、(陸自隊員は)インドネシア料理を気に入ってくれたよう」と嬉しそうに話した。
昨年に続き、インドネシアへのTPP派遣は2回目となる増田貴子3等陸曹(39)は「食事に困ったことはない。生徒たちみんなを誘って焼肉レストランへ行くこともある」という。
訓練では、工兵たちがドーザーやローラーなど5種類の重機を使って整地作業などを実践する。
上田達也2等陸曹(37)は「重機操作が上手くなった」と訓練成果に満足そう。太田真一2等陸曹(46)も「無駄な動きもあるが、飲み込みが早くびっくり」と上達ぶりに目を細めた。
今回のTPPには、インドネシアのほか、パキスタン、ブータン、スリランカ、カンボジア、フィリピンの5カ国から派遣された工兵要員16人が生徒として参加。帰国後は各国陸軍の教官として自国兵士に学んだ技術を伝授する。
対面交流によって双方の知見や教訓を共有し、国際間の信頼を醸成して連携を深める。平下哲也2等陸曹(37)は「PKO協力の意義を肌で感じ、自信につながった。教える立場だが、各国部隊から学ぶことが多い」とこの日の訓練を振り返った。(文・山本佑、写真・長谷川周人)