植林地見学とつかの間の1人時間 プカンバルのタージ・マハルへ リアウ州
8月上旬、海外研修でインドネシアを訪れた筑波大学と筑波大学附属坂戸高校の生徒ら。持続可能な経営の実現に本腰を入れた、製紙大手アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)が管理するリアウ州の植林地見学を取材した。また、合間を縫って同州プカンバル市の数少ない観光スポットへも足を向けた。
大手財閥シナルマスグループ傘下のAPPは、国内で東京都5個分に相当する植林面積を管理。同社は自然林伐採の全面停止を宣言し、100%持続可能な植林木を原料とする生産サイクルに舵を切っている。
リアウ州の植林地では高さ18㍍の「火の見やぐら」に登り、360度に広がる広大な植林を目の当たりにした。しかし、このやぐら、上に登るにつれ一段一段が急勾配に。目を下にやると地面が丸見え。「落ちたらどうしよう……」と思うと、心なしか足が震える。高いところは平気なはずなのに震える足と、写真を撮らなければならない使命感と戦いながら、最後の一段を踏んだ時「この震え、筋肉痛だ……」と気づいた。インドネシアに来てから歩く機会を失った私の足は、この急な階段に耐えられなかったようだ。
広大な緑を眺めながら、筑波大の教授に「自然に関する研究をしていると、人間はいない方が良いという結論になるのですか」と質問してみた。すると教授は「研究者も人間だからその結論には至らないが、共存は難しいという意見を持つのではないかな」と。
引率教師の「インドネシアの環境問題はインドネシアだけの問題ではない。私たちの生活にも原因がある」。この言葉に、私は他国が悩む環境問題はどこか他人事だったなと気づかされた。しかし同時に、便利になった現代生活において、紙やエアコン、乗り物を使わないようにしようとしても難しいだろうとも思った。
研修工程の中で唯一の自由時間が2時間あった。時間もちょうど夕刻。これは外に出るしかないと思い、プカンバル市の数少ない観光スポットへ。向かったのは建物が、本を開いたように見えるという図書館「Soeman HS」とプカンバルのタージ・マハルと呼ばれるモスク「Masjid An―Nur」。
2008年に建設されたまだ新しいこの図書館は、マレー建築とイスラム建築が混ぜ合わさったもの。一方、1963年に着工され、5年の歳月をかけて完成したモスクは、マレーやアラブ、トルコ、インド様式を取り入れているという。
夕日を背景に佇む偉大なモスクを前に、写真撮影やお喋りに興じる住民たち。モスクがあちらこちらにあるジャカルタとは違い、このモスクから流れるアザーンだけが耳に入ってくる。アザーンを聞きながら横になり、「そろそろホテルに戻らなければなあ」と思いつつも「あともう少し」と、つかの間の1人時間に心を癒した。(リアウ州プカンバル市=青山桃花、写真も)