「ワンチーム・ワンゴールで」 両陛下をお出迎え ホテル・インドネシア・ケンピンスキー

 日本の戦後賠償でスカルノ初代大統領の時代に建設された「ホテル・インドネシア(HI)」。第4回アジア大会に合わせて1962年8月5日に開業した五つ星ホテルで、世界の国賓、王族たちを迎えてきた。そして6月、友好親善の目的で訪イされた天皇皇后両陛下が宿泊され、1週間のご滞在を舞台裏から支えた。

 天皇陛下の訪イは上皇ご夫妻が1991年に訪問して以来の32年ぶりとなる。5年に及ぶ改修を終えて「ホテル・インドネシア・ケンピンスキー」として再出発したのは2009年のこと。スカルノ氏の肝いりで〝インドネシアの顔〟となった老舗ホテルの底力を見せるチャンスだった。
 「ワンチーム、ワンゴール。スタッフが一丸となって両陛下をお迎えしたかった」。日本市場開拓部長の今田智子氏は両陛下のご滞在をこう振り返る。
 「両陛下とも純朴で、しかも英語がパーフェクト」。両陛下が注文される食事を24時間体制で担当したチームの中核を担ったクロアチア出身のヤコブ・オルスリック副料理長はこう言って目を丸くした。
 両陛下の食事はホテルが用意できる全メニューを事前提出し、この中から両陛下が選ばれた。「もちろん、お好みに合わせて工夫もする。日本大使公邸からもお弁当が届くので、ホテルで用意したのは全体の半分ほど。6割がインドネシア料理だった」。
 オルスリック氏がなにより印象的だったのが、両陛下が朝食の「ブブール・アヤム(鶏がゆ)」をとても喜ばれたこと。ホテルの名物メニューでスカルノ氏が好んで食べた「ブブール・アヤム・HI」だ。
 ケーキ作りなどで在留邦人にも知られるエグゼクティブパティシエのウィタさんも大役を果たした。6月9日は日本中が祝意に湧いたご成婚から30年。そこでご成婚を祝うウェルカムアメニティーとして特製スイーツの創作を思い立った。
 納采の儀など当時の写真探しから始めたが、「皇后さまに気に入っていただき、なんと日本に持ち帰りたいとのこと。パティシエ冥利に尽き、改めてお持ち帰り用をご用意した」という。
 両陛下がお泊まりになった部屋は、「ガネシャ・ウイング」の中層階にある「プレジデンシャル・スイート」。412平方㍍と広い部屋の防弾ドアを開けると、古都・ソロのベドヨダンスを舞う4体の踊り子像がお出迎え。浴室やクローゼットなどを除く8部屋からなる客室は、国内各地から集めたアート作品が並び、まるで美術館のようだ。
 もっとも両陛下のプライバシーを守るため、ホテルのスタッフがこの部屋に立ち入ることはなく、まして言葉を交わす機会もない。穏やかな人柄と笑顔で人々を魅了された天皇皇后両陛下の今回のご訪問だが、その舞台裏を支えたのは老舗ホテルの誇りだったのかもしれない。(文・野元陽世、写真・長谷川周人)

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