インドネシアが誇る場所へ モナス 独立の象徴
インドネシアの近代史を象徴する建造物であり、同時に現代的なジャカルタのランドマークでもあるモナス(独立記念塔)。1975年に完成したこの塔は、国家独立のシンボルであり、国民の誇りでもある。コロナ禍で長く展望台への立ち入りはできなかったが、ようやく営業が再開されたと聞いて行ってみた。
国立図書館前の入り口から入ると、土産物店が立ち並ぶエリア、そして木陰でのんびり過ごす人々を横目で見ながら広い独立広場を抜け、そのど真ん中にあるモナスを見上げた。いつも付近を車やバイクで通る度に気になっていたが、真下から眺めると思っていた以上に高く、大きく、迫力があった。
モナスの高さは約132メートル。取り囲む独立広場は世界最大級とされ、とにかく広い。そこに突起するモナスの存在感は強烈だが、展望側への入り口はイスタナ(大統領宮殿)のあるモナス北側にある。つまり、反対側となる南側の入り口から入ると、広場を横切っていく必要があり、大汗をかくことになった。
ようやくたどり着いた入り口付近で塔を眺めているとおじさんに「登ってみたい? 案内するよ」と声をかけられた。お小遣い稼ぎとは思ったが、インドネシアの歴史、ジャカルタの街並みについて知識を深めるためにも、とりあえずそのガイドさんに案内してもらうことに。
もっとも、ガイドさんは管理事務所の職員だったらしく、チケット売り場を見向きもせず、彼の〝顔パス〟ですんなり中まで入れた。
モナスの展望台に行くには、地下の通路に延々と並び、エレベーター待ちは長蛇の列になると聞いていた。「1時間待ちはざらだよ」とも言われ覚悟して行ったが、断食月、そして平日の暑い時間帯ということもあり、見学者はまばらだった。
早速、彼の案内で地下道を通り、エレベーターに乗ると1分ほどで展望台に到着。地上115メートルからの景色はジャカルタの街並みを一面に見渡せた。ほどよい良風が吹いてきて気持ちがよかった。もっとも、少し霞がかかってジャカルタの空気の悪さを視覚から確認することにもなるのだが……。
そして地下にある歴史博物館へ。ここでは原始時代からインドネシアが独立を勝ち取るまでの歴史を描いたジオラマが展示されている。ガイドさんの丁寧な説明でこの国の歴史を知ることができた。
見学を終えて外にある銅像や石像を見るとガイドは終了。となれば、チップをを払わねばと思いカバンから財布を取り出したが、ガイド料の料金交渉をしていなかった。はて、いくら払うのだろう。どきどきしながら、とりあえず10万ルピアを渡すと足りないと言われ、結局15万ルピアを支払った。するとガイドさんはご機嫌な様子で、シャトルバスに乗るといいと言い、バスの最前列に乗せてくれた。行きの汗をかきながら歩いたのは何だったんだろうと思うほど出入り口まで一瞬で着いた。
何はともあれ、スムーズに展望台まで登り、ジャカルタの街を一望。また、歴史博物館でインドネシアの歴史を学べ、大満足の半日だった。そして改めて実感した。愛国心の強いインドネシア人にとって独立の象徴であるモナスは、大切な誇るべき場所であることに違いない。(野元陽世、写真も)