空の青が照らす美しき海 アチェ州ウェ島サバン 目指すは最西端の地
「サバンからメラウケまで――」。旅好きの人ならば聞き馴染みがあるだろうこの言葉は、インドネシアの広大な国土を指す時によく用いられる。サバンは最西端アチェ州ウェ島(サバン)を、メラウケは最東端南パプア州メラウケを。バンダアチェ市内で手持ち無沙汰となっていた私は、最西端を示すゼロ地点の碑と記念写真でも撮ろうかと、軽い気持ちで訪れた。しかし、サバンで見た海は「わあ!」と子どものように歓声をあげてしまうほどの美しさだった。
サバンは、アチェ市内にあるウレレ(Ulee Lheue)港から高速船で約1時間半揺られた先にある小さな島だ。料金は片道大人1人3万5000ルピア。
高速船のチケットを購入するため、列に並んでいると「サバンでは車とバイクどっちがいい?」と男性が話しかけてきた。ちょうど、島へ着いたとして足はどうしようか、インドネシアのことだし客引きが山ほどいるだろう。いなければ、村人にお金を払い1日付き合ってもらおうかと考えていたところだった。
私はその男性に「バイクがいい。でも運転ができないの」と告げると、「運転手付きで25万ルピアでどうか」と返ってきた。身の安全を優先し、基本的に値段交渉はしないようにしている私は2つ返事で了承。すんなり島での足をゲットした。
そして、遂に島へ到着。船から降りると同時に始まる客引きを背に、バイクで島を駆ける。海の潮風が肌に触れ、少しひんやりして気持ちが良い。また、辺ぴな島なのに道路がきれいに整備されていることに気づいた。過積載の問題もないのだろう、快適な乗り心地を体感した。
島での相棒に「とりあえず、キロメートルゼロの記念碑へ行って」とお願いした。しかし、初めに連れていかれたのは水上コテージとはギリギリ言えないような宿泊施設だった。インドネシア人あるあるだなあと思いながら後ろを付いて歩くと、透明度が高い美しい水色の海が目に飛び込んできた。人生で見た海の綺麗さランキング1位に輝いた。
アチェは暑い。ジャカルタでは滅多に見られない快晴が続く。サバンも同様、空に顔を見せてやると眩しいほどの青を照らす。これに反射し、海も当然一層美しく映る。高速船で一緒になったオーストラリア人のおじさんにサバンでは何泊するのか尋ねられ、日帰りだと言うと「嘘だろ? 何考えてるんだ」と驚いた顔をされたが、すぐさま納得した。私は、サバンに宿泊しなかったことを既に後悔していた。
この日はラマダン(断食月)中だったため、島の人も日中は〝冬眠状態〟。マリンアクティビティーも営業しておらず、ただ、海を眺めながら時間の流れを感じ波音にゆったりと包まれた。次回は海に潜ることと宿泊を心に決め、市内へ帰るチケットを購入した。(青山桃花、写真も)