言葉のスイッチ (78)
「私の悩みはジャカルタの渋滞です。以前と比べて改善したと聞きますが、それでも一度巻き込まれるとどうにも気分が悪くなり、その後の仕事にも影響が出ます」
身も心もクタクタになるジャカルタの渋滞は、本当に参りますよね。そんな時でも、心を喜びに満ちた穏やかな状態に保ちたいものです。
ただ、実際には、私たちは外部の出来事に条件反射的に反応し、感情が揺さぶられます。自分の生活が充実し、安心している時にはさほど打撃を受けずに済みますが、自分が楽しくない時、緊張している時、急いでいる時には、感情は激しく揺さぶられます。
商談に向かう車の中で、先方の社長が待つ姿が浮かび、「遅れたら、気分を害して商談もまとまらないだろう」と心配し始めたら、気分が低下し思考はストップします。こんな時、人間の脳は過去の失敗を思い出し、未来への不安に苛まれ、グルグル嫌な言葉が回り始め、負のスパイラルに陥ります。
本稿では、気分の悪い状態から良い状態に、一瞬で切り替えられる方法をご紹介します。
それは、自分専用の気分転換するための言葉のスイッチを決めておくことです。「アブラ・カタブラ」といった呪文でもOKです。肝心なのは、この言葉のスイッチを使うことで、自分はいつでも一瞬で気分を転換できると思い込むことです。私自身は郷に入れば郷に従え? 渋滞が始まった際に「Ya,Tuhan!(神よ)」と口にしていましたが、車中が和み、平常心を保ち、繰り返すうちに気分転換できるようになりました。気分転換すると、先方に電話することを思いつくでしょう。「申し訳ありませんが〇〇ほど遅れます」と伝え、待ってもらえるか別の日にするかを先方に選択してもらい、待ってもらえるとなれば、車中で先方が有益な情報、アイディアを再考してみては如何でしょうか。気分転換から違う行動ができたことでは、ピンチをチャンスにすることができるかもしれません。
その程度の話かと思われたかもしれませんが、往々にしてあるのは、気分の悪さを運転手にぶつけ、気分が悪い車で毎日出かけ、その気分のままで仕事をし、結果、冴えない業績になってしまうことです。ご健勝をお祈りします。(家族関係心理士/心理カウンセラー 高﨑美佳)
〈連絡先〉カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。