【今日は心の日曜日(80)】 コミュニケーション・スキル
「母親との関係で悩んでいましたが、自分が成長することで母へのわだかまりは消えつつあります。ただ、支配欲の強い母が変わったわけではなく、うまく対応できません」
前稿で、母親の支配に苦しむ相談者に「母親のことはひとまず横に置き、自分を愛すること、自尊感情を高めることから始め、それができた時こそ、母親を許せる」と回答しましたが、母親が変わったわけではないので、今回の相談もごもっともです。
次の段階として、コミュニケーション・スキルを学ぶことをお勧めします。脳科学者たちは、計算力や記憶力といった能力は遺伝によるところが大きいが、人が幸せになるために後天的に鍛えることができる能力があり、それはコミュニケーション・スキルだ、と提唱しています。
母親とうまく付き合えない悩みを持つ方の特徴に、母親に対して「ノー」と言えない、合わせ癖があります。自分の人生を母親に言われるがままにして、将来、問題が起きた時に自分で決めしなかったことを後悔し、母親への恨みを抱えることになるかもしれません。そんなの嫌ですよね。
対策として、自分の意思を母親にはっきり伝える訓練が必要です。具体例を挙げて説明します。
母親「ジャカルタは危なくて心配だよ。いっそのこと海外駐在のない仕事に転職したら。そろそろ結婚して、子どもを生んでもいい年頃でしょ」
娘「心配してくれてありがとう。でも、自分の人生は自分で決めたいの。お母さんは私の人生に責任を取れないよね」
母親「そんな考えだから、あんたは甘い! 言うことを聞けないなら、日本に帰ったら家を出て独立することだね。私はもう知らないよ」
娘「お母さんはそう思うのね。分かった。なら、私も独立を考えてみるわ」
支配欲の強い母親に、自分の意思をはっきり伝えています。脅迫された「独立」という言葉を、敢えてお母さんに返した点はあっ晴れです。常に問題の解決策は自分の中にあります。自分が母親に依存しない勇気を持てるかです。
愛情深い母親は、我が子愛おしさのあまり、先回りしてアレコレと言います。自分が子どもを支配しているとは露ほども思っていません。子であるあなた自身が変われば、今から、二人の新しい関係が始まるのでないでしょうか。(家族関係心理士/心理カウンセラー 高﨑美佳)
〈連絡先〉カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)