部下育成の対話術 (16)
部下の育成に悩みを抱える上司からの相談に対し、上司自身の部下への接し方が鍵となり、コミュニケーションの取り方が決め手になるので、傾聴法を取り入れた対話術の導入を前稿で提案しました。
そこで本稿は対話術の詳細です。復習すると【前半】は傾聴に徹します。①迎え入れる/受容する②肯定的メッセージを伝える/共感する。【後半】は展開・相談です。③願望・希望を聴きだし膨らませる④考察/イメージ作り/問題点の確認⑤部下の意思決定⑥感謝して終わり、です。
企業関係者の皆さんが部下育成で望むことは、「自ら考え、主体性ある行動が取れるようになる」ことですね。「主体的行動」を導き出したいなら、①②で話を徹底して聴けるかが勝負です。共感は「自分のことを分かってもらえた」という感覚です。それをしっかり部下に与えられたら、「主体的行動」を生み出すことができます。
よくある失敗は、共感を踏まずにいきなり④の考察のための質問から入ることです。上司は部下を進むべき方向へ導いているつもりかもしれません。しかしながら、部下にしてみたら、聞かれたから答えているだけで、自分の気持ちを聞いてもらえているわけでもありません。むしろ上司にチェックされたと緊張し、ますます自分の考えを出しにくくなります。このやり方で接している間は、部下の主体性ある行動を上司自らが封じ込めているようなものです。
それなのに上司は部下が行動しない、間違った方向へ動いていると思い込むほどに、それとなく部下もそう思われていると感じてしまいます。人は感情が行動を左右する生き物なので、部下との関係はシックリせず、部下のパフォーマンスを下げてしまいます。
改善策は、上司が部下の話を聞く力を付けることです。脳にはミラー細胞の働きがあり、感情は鏡合わせのように相手に伝染するので、上司が成長しようとする「熱量」を持つ時、その「熱量」は部下に伝播し、部下自身の成長意欲を高めることができます。
上司の大切な仕事は部下にやりがいを持たせてあげることです。部下の気持ちを聞くことに徹してみては如何でしょうか。部下のやる気を引き出すフォロワーとなり、部下の資質、能力を引き出せたら上司の本懐です。部下をその気にさせる対話術を身に付けることは面白そうだと、心くすぐられませんか。(コミュニケーション専門カウンセラー 高﨑美佳)
本稿へのご質問などはカウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。