幸せの青い鳥 (58)
「結婚してすぐに夫のインドネシア駐在に同伴し、ジャカルタに来て半年以上になります。異文化に触れることで自身がさらに成長できたらと期待していましたが、何ら充足感が得られません。仕事を辞めたことに後悔はないし、主人も優しい人です」
海外で新婚生活が始まったとなると、生活環境が大きく変わったことでしょう。ただ、異文化の中で成長できる、できないの悩みというより、根底に以前から抱えていた自己成長に関わる悩みがあるように感じます。
異文化に触れても成長できないと期待外れに思われたかもしれませんが、あなた自身が成長願望を持ち続けていることは素晴らしいことです。今回、環境が変わっても問題は解決しないと気づいたことが、大きなヒントになると思います。
問題は場所ではなく、自分の心にあります。モーリス・メーテルリンクの「青い鳥」の話をご存知でしょう。チルチルとミチルの兄妹が夢の中で、思い出の国(過去)や光の国(未来)、戦争中の国へと幸せの象徴である青い鳥を探しに行きます。どこにも青い鳥はいたのですが、連れて帰ろうとすると青くなくなったり、死んでしまったり、飛び去ってしまいました。夢から覚め、目の前の籠の中の自分たちが飼っている鳩こそが、幸せの青い鳥だった、というお話です。1907年に発表されたこの作品が、現代社会の中でも色あせず、人々の心を惹きつけるのは、そこに普遍の真理があるからです。
あなたを成長させ、人生を豊かにしてくれる宝(青い鳥)は、外(環境)ではなく自分の内にあります。自分の好きなもの、長所の中にも隠れています。その宝となる原石(資質)を見つけたら、それを磨き、使うのは、「今」です。過去でも未来でもない、今この瞬間に集中できるかで、人生の豊かさが決まります。今この瞬間に、自分の宝を使って人の役に立てるよう努力するほどに、自己重要感を感じ、充足感を得ることができます。
例えば、あなたが料理好きなら、ジャワ料理を勉強して、日本風のスパイスの使い方や盛り付けでアレンジすれば、あなたのセンスに皆ビックリすることでしょう。私の友人はジャカルタで習った料理を自分流にアレンジして、帰国後、日本でインドネシア料理教室を主宰しています。
宝は一つと限りません。青い鳥がそうであったように、宝の一つは、目の前の優しいご主人さまではないでしょうか。(コミュニケーション専門カウンセラー 高﨑美佳)
本稿へのご質問などはカウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。