仮面を付け替える

 「妻は私の実家に帰省する度に、私の留守を見計らって姑から就学前の子どもの躾について注意されるらしく、実家から戻る度に聞きたくない嫁姑問題の不満を話すので、今夏の帰省も気が重いです」
 子どもは親だけでなく、多くの人の愛情に囲まれて育てられる方が心育に良い影響があり、時に実家に帰省することは大切です。ただ、実家のお母さまが息子には何も言わず、注意する矛先が奥さまだけに向けられていることが、ややこしい問題を生み出してしまっています。奥さまはあなたに文句が言いたいのではなく、助けを求めているのではないでしょうか。
 あなたと奥さまが育った環境にも、家の価値観にも違いがあり、あなた方ご夫妻が子どもの頃と今とでは、推奨される育児法にも違いがありますから、それを念頭に考えてみましょう。
 参考までに先日、ある奥さまの里帰りの話を聞きました。「お義母さまのお手伝いの間、3歳の子どもが機嫌よく一人遊びができるようにオモチャを多めに出して遊ばせていたら、晩ご飯に着席した途端、お義父さまから「オモチャを散らかしたままで、躾がまるでできていない」と叱られました。謝ったのですが、スポーツ番組を見て寛いでいた主人にも、お義母様にも一言も弁護してもらえず、とても悲しかった」。
 食事前に使ったオモチャを片づけることは正論ですが、実生活では正論が常に正しいとは限りません。家族関係を良好に保ちたいのなら、あなた自身が何ができるかを考えてみましょう。
 あなたは父親であり、夫でもあり、親との関係では子どもに戻ります。習い事では生徒になり、職場では上司にも部下にもなります。
 人は、場面場面であるべき自分を使い分けます。ペルソナ(仮面)を付け替えると言われています。
 ところが、実家に戻ると子どもの頃の自分が蘇り、子どもの仮面をつけっ放しになりがちです。帰省中であっても、臨機応変にこの場面ではこの私と、ペルソナを切り替える必要があります。「父さん、ずっと一人遊びさせていたんだから、大目に見てやってよ」と言えたら、奥様はどんなにか嬉しかったでしょうね。
 せめて、里帰りから戻ったら、スパッとペルソナを付け替え、夫として奥さまの気持ちを徹底して聞くことが家族円満の極意です。
 この時、世の奥さまたちが何を言って欲しいかは、「親も僕にとって大切だけど一番大切なのは君。君と子どもとの生活が何より大切だ。僕たちで子育ての方針を考えていこう」という言葉です。(コミュニケーション専門カウンセラー 高﨑美佳)
 本稿へのご質問などは、カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。

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