消えた露天商と喫煙者 ジョクジャカルタ 賑わうマリオボロ通り

 「マリオボロ通りに訪れなかったらジョクジャカルタに訪れたと言えない」。インドネシアにはこんな有名な言葉がある。記者が留学時代に1年間過ごしたジョクジャカルタ特別州。久しぶりにそのマリオボロ通りに訪れると、大勢の国内外からの観光客で賑わっていた。ただ、通りの様子をよく観察すると、露天商の姿はなくコロナ禍前と随分様変わりしていることにも気がついた。

 留学時代は1カ月に1~2回、マリオボロ通りに通った。路上で食べ物や服を売る露天商、ベンチでくつろぐ市民、ストリートパフォーマンスをする人、雑然と商品が並ぶ市場、この雰囲気に何とも言い難い心地良さを感じた。
 しかし、約2年3カ月ぶりに訪問した14日、変わり果てたマリオボロ通りを目の当たりにする。通りにいた露天商、たばこを吸いながらベンチでくつろぐ人の姿はなかった。露天商は通りの北端と南端にある新設された市場の「マリオボロテラス1と2」に移動。通りは禁煙が求められていた。
 また、道沿いに植えられているタマリンドの木が成長して緑豊かになっているほか、道端に落ちているごみの数もかなり減っていた。そしてコロナ禍で行動に制限がかかり続けていた反動か、通りは人、人、人。国内外からの観光客で道は埋め尽くされていた。
 マリオボロテラス2でココナッツジュースを販売するカランさん(50)は「テラスが建設されて労働環境は清潔で快適になった。販売エリアや屋台も政府から無償で与えられ、みんな平等に商売することができる」と笑顔を見せる。
 しかし、カランさんによると、政府が販売エリアや屋台を無償貸与する期間は1年間。「2年目も無料で貸し出されるとは限らない。有料となった場合、費用がどのくらいかかるのかも分からない」と一抹の不安も感じている様だ。
 州内にある名門校、国立ガジャマダ大学(UGM)に通うレニさん(20)は「2021年当初、学校はオンライン授業、政府の行動制限で観光客は減少。ジョクジャカルタも観光業従事者を中心に大きな打撃を受けた。しかし、22年に入り人流は徐々に増加、マリオボロ通りはコロナ禍前より賑やかになっている」と感想を述べた。
 政府の規制緩和措置により、停滞していた観光経済がジョクジャカルタでも動き始めているようだ。
 ワイサック(ブッダ生誕祭)と重なって14~16日は3連休となり、マリオボロ通りでは野外コンサートも行われていた。人々が密集しコロナ感染の懸念もあったが、ざっと80%の市民がマスクを着用しておりウィズコロナ時代における観光のあり方も垣間見えた気がする。
 州政府によって行われた観光地整備。露天商を一定の場所に集めることで道は広くなり、歩く際の快適さが増していた。しかし、雑然としたマリオボロ通りが好きだった記者の心には満たされない気持ちが残る。あの時の光景が戻って来ないと思うと寂しい気持ちになる。(ジョクジャカルタ=長田陸、写真も)

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