深紅に染まった中華街 1日は春節 駆け込み香港人も

 今年のイムレック(春節=中国の旧正月)は2月1日。コロナ禍の中で祝う2度目の春節となり、様子を見ようと足を運んだ。例年通り、中華街・グロドックは春節用の飾り物で深紅に染まり、買い物客で賑わっている。そして驚くことに、インドネシアの露天商に交じって香港人の姿も。急速な「中国化」が進む香港の住民にとり、「将来に希望が持てず、インドネシアは〝駆け込み寺〟」になっているという。

 中華街といわれる西ジャカルタのグロドックは、中華圏の伝統的な飾り物であふれている。今年の干支(えと)の「壬寅(みずのえとら)」をモチーフにした飾り物も並んでいた。
 ただ、緊急活動制限の影響もあり、コロナ禍前に比べるとやはり活気に欠ける。ジャカルタ最古の中国寺院として知られる金徳院も、改修工事のために門を閉ざしたままだった。
 春節の飾り物を売るアントンさん(37)は、「昨年より人出は戻ったが、売上げは不安定。1日の売上げが50万ルピアに届かない日もあり、経費を差し引くと生活費が残らない」とため息交じりに話した。 
 写真を撮りながら取材を続けていると、ある商店の前で足が止まった。オーナーのHさん(60)は香港人女性。彼女は約2年前に香港から脱出、華僑・華人系住民が多い西カリマンタンにやってきた。
 「香港を後にした理由は2つある。まず大陸ビジネスが破綻した。そして中国化があからさまに進むが香港には未来がない、だ」
 中国に回帰した香港では1997年以降、中国資本が流れ込んで地価が高騰。生まれ育った香港での商売を断念したHさんはボーダーを越え、中国大陸側で飲食店を始めた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、中国当局は厳しいロックダウン戦略を展開。街から人影が消え、Hさんの食堂経営は破綻した。
 香港に戻ったが、Hさんは「民主化を求める市民の声は、政治圧力と暴力によって押しつぶされた。親戚2人が香港警察に撲殺され、インドネシアへの移民を決めた」。
 西カリマンタンに渡ったHさんだが、新天地での道は険しかった。そこで昨年4月、ジャカルタに移り住み、中国の伝統的なスイーツを扱う食材店を構えた。Hさんは今、「もう後がない。伝手もないが、このインドネシアで歩いて行く」と背水の陣を敷く。(センディ・ラマ、写真も)

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