軍・警察航空部隊の拠点 墜落機捜索を支援 ポンドックチャベ空港
「ベース(基地)が騒がしいの。何かあったのかしら?」。思えば友人がくれたワッツアップへの書き込みから、取材は立ち上がった。乗員乗客62人を乗せたスリウィジャヤ航空SJ182便の墜落事故。現場海域における機体や遺体の捜索活動は打ち切られたが、その側面支援をしたインドネシア海軍の航空部隊などが拠点を置くポンドックチャベ空港(PCB)を見てきた。
バンテン州南タンゲラン市に位置する軍民共用のポンドックチャベ空港。太平洋戦争における日本軍の南下に備え、首都防衛網を築く連合軍の軍事基地として建設されたという。
滑走路は2千メートルと短く、大阪伊丹空港のA滑走路とほぼ同じで、短距離の国内線に利用を拡大する計画もある。
所有は国営石油・ガス会社プルタミナなどで、国軍や国家警察に所属する飛行部隊の拠点だ。日頃から空挺部隊が降下訓練を実施しており、これが地元ではお馴染みの風景らしい。
前述の友人は事故が起きた9日午後、滑走路から2キロほど離れた自宅に向かっていた。異変に気づいたのは、離発着機からいつもの降下展開がないことから。フェンス越しに基地内を見渡すと、空挺兵に代わってレスキュー隊らしき一団が集まっていたという。
情報が錯綜する中、目を引いたのはイスタナ(大統領宮殿)に詰めるインドネシア人記者が送った一報。SY182便の乗員業客名簿が公開され、日本人乗客はいない模様であることなどがわかってきた。
この痛ましい事故から1週間近くが過ぎたこの日のポンドックチャベ空港は、落ち着きを取り戻しつつあった。それでも、海軍の輸送機が離発着を繰り返し、警察のヘリは救難用とみられる資材を満載しているようだった。
フェンス越しの取材も一段落したので、空港周辺を巡ってみることにした。その昔、撮影用の大型脚立を車に積んで行った在日米空軍司令部がある横田基地(東京都福生市)に似た〝空気〟を感じたからだ。
「1961年製の『バットマン』さ。エンジンは換装済みだよ。内装もばっちり仕上げるから100ジュタでどうだい?」。アメリカンコミックのスーパーヒーロー、バットマンのこと? 確かにリヤのフォルムはあの「バットモービル」のよう。驚く筆者に店主のエリさん(48)は、「メルセデスなら僕に任せて」とにやっと笑った。
エリさんによれば、このエリアにはクラシックカーのレストア専門店が点在しているが、店舗によって車種に得意不得意があるそう。官民一体で電気自動車(EV)の普及を目指す中、地球環境には負担の大きい車になりそうだが、車好きにはたまらない。
国軍の支援体制を取材に行ったはずが、途中から趣味の世界に浸かってしまうある非番の日の午後。「もしメルセデスでなく、ランドクルーザーの40系なら…」などと妄想しながら帰路についた。(長谷川周人、写真も)