不安を小さくする対処法
「新型コロナウイルスが変異して感染力が強まったと聞き、不安です。不安を小さくする方法はありませんか」
不安や恐れの感情を伴うと、脳内でノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されます。危険を察知し、逃げるか戦うかを瞬時に判断し、何かしら防衛行動を起こすよう働きかけてくれるホルモンです。
したがって、一概に不安が悪いとはいえませんが、ノルアドレナリンが長期間活発に働く状態は、机上に置かれた紙箱が、机をドンドン叩くたびに舞い上がって落下し、次第に壊れていくようなもので、健康を損ねやすい状態と言えます。
他方、愛や幸福感を伴うドーパミンの働きも、外出規制で行きたいところにも行けず、会いたい人にも会えず、自由なはずの時代に自由でない、「生ききたい」「知りたい」「愛し愛されたい」という3つの脳の本能に逆う状態では活動できません。このような状態では、ノルアドレナリンとドーパミンを中和させるセロトニンの貯蔵も間に合いません。これら脳内3大主要神経伝達物質のバランスが傾き、脳が悲鳴をあげている状態が、今の私たちです。
「どうしよう」「どうしよう」「どうにもならない……」と嫌な言葉が頭を巡るうち、新型コロナウイルスを恐れていたはずが、感染する前にまさかの思考停止、うつ、心の問題という負のスパイラルにはまってしまうかもしれません。
そこで対処法ですが、カウンセリングの現場の事例から学んだ方法をご紹介します。人間はエネルギーがあるほどに行動は活発になりますが、疲弊していくうちに徐々に行動できなくなります。行動できなくなると不安は膨み、何もしないとまず消えることはありません。そんな時には行動療法が効果的です。できることをひとつふたつと増やすうちに、不安は消えていきます。日頃から行動の実践に心掛け、習慣づけることでメンタル不調を予防することができます。
と言うと大変そうですが、実は簡単。おしゃべりと運動はストレス発散に絶大な効果があります。例えば、良質な映画は人生を学べるものが多く、家族で鑑賞して感想を話し合うのはどうでしょうか。笑いはリンパの流れをよくし、涙は心を浄化します。話す相手がいなければ、身体を動かすことから始めてください。セロトニンは「リズム運動×朝日」でグーンとアップします。「エネルギー温存=休息」も忘れずに。(コミュニケーション専門カウンセラー・家族関係心理士 高﨑美佳)
本稿への質問などは、カウンセリングルーム「ミカモーレ」(mamapre12@gmail.com)まで。