ファタヒラ広場は今 旧市街区のアンティークな世界
新型コロナウイルスの感染が広まり、今年は「大規模社会的制限(PSBB)」で観光地などは軒並み閉鎖された。ジャカルタ観光の目玉とも言える旧市街区のファタヒラ広場もそのひとつ。制限緩和の中であの有名なカフェは今、どうなっているのだろう。8月に初めて訪れた時は門外から閑散とした広場を眺めるだけだったが……。
ジャカルタ・コタ駅から海に向かって北へ直進すると、以前にのぞき込んだ南東側の門はまだ閉ざされていた。広場は相変わらず寂しい。しかし柵越しに観光に来たと思われる若者たちの姿が見えたので、反対側の門までぐるり回ると、広場に入れることができた。
「コロナ禍でずっと封鎖されていたが、最近やっと少しずつオープンできるようになった。ただ、広場はまだ立ち入り禁止なんだよ」
早速広場へ向かったが人はまばら。警備員に事情を聞くと、そういうことらしい。ならば、注意書きのひとつでも書いておけばいいのにとも思ったが、感染者は急増している。仕方がない。気を取り直し、カフェ・バタビアで初ランチを楽しむことにした。
カフェ・バタビアは観光客のみならず、地元っ子からも「居心地がよくて長居してしまう」と聞いていたが、まさに百聞は一件にしかず。店内に入った瞬間、レトロな椅子やテーブル、額縁に入れられた古い写真などで、一気にアンティークな世界に包まれる。
メニューはナシゴレンからハンバーガーまで幅広い。アルコール類やコーヒーなどの飲み物も充実していて、選ぶのに迷うほどだ。いわゆるお品書きは電子化され、QRコードをスマホで読み取る方式。2階はまだ営業はしていないが、上ってみるとカウンターの食器は整頓され、再開の日を心待ちにしているようだ。
カフェ・バタビアは店内営業ができない期間、デリバリー限定でつないでいた。11月中旬から店内営業も再開し、入店人数は制限されているものの、丁寧な接客と料理はそんなネガティブな雰囲気を感じさせない。店内にはクリスマスの装飾も施され、スタッフの女の子は「クリスマスメニューも用意しているから、また来てくださいね」と愛くるしい笑顔を見せてくれた。
広場の周囲には廃墟も多いが、オランダ植民地時代からの洋式の建物が並ぶ。倉庫街を抜け、ジャカルタ海洋博物館が見えるところまでたどり着いた。
周囲にはオランダ東インド会社の略称である「VOC」の看板を掲げた建物がいくつかあり、その一つにお邪魔してみることに。高級中華の海鮮レストランで、入口側は真っ白な壁に圧倒されるが、中庭に抜けると時代を重ねた木製バルコニーがあった。店員の話では、1602年に建てられ、かつて船舶のいかりを製造する工場だったという。
観光地としては定番だが、ファタヒラ広場やその周辺のレトロな建築物は何度も訪れたくなる。今なら優雅な空間を楽しむランチを兼ね、人が密集するところを避けた散歩にちょうどいいかもしれない。(三好由華、写真も)