首都、翌日には混乱なく 大規模デモ発生も ジャカルタ・タムリン通り
ジャカルタ特別州で「オムニバス法」に抗議する大規模デモから一夜明けた9日。警官隊と暴徒の衝突で荒らされたタムリン通りを、何事もなかったかのように車が行き交う様を見て驚いた。道路のごみや破壊された施設の残骸は、州政府によって素早く除去されていた。
8日深夜、暴徒に放火されサリナ・デパート前のバス停留所から、ガラスの割れる音が聞こえた。暴徒の姿は見えない。運営会社や州政府の職員が、消火後の建物の復旧作業に当たっており、残骸を除去していたのだった。割れ残ったガラスを繰り返し棒で叩き、取り除いていく。
周辺ではオレンジ色の作業服を着た州政府職員が、道路に散らかるごみや、折られた道路標識などを片付けていた。
ホテル・インドネシア(HI)前ロータリーまで、同様の景色が続く。中央銀行近くの時計塔や大量高速鉄道(MRT)駅の落書きは消され、破壊された分離帯のブロックが次々とトラックに積まれていった。
地元メディアによると、州政府は暴動後の清掃・復旧作業のため、10日までに約1100人の人員と、トラックなどの車両74台を投入。398トンのごみや破壊された施設の残骸を集めたという。
燃やされたバス停留所では復旧作業が続くが、12日に利用が再開され、バスは通常通り運行している。
通りを見渡せば、燃やされた警察の詰め所にシートが掛けられていたり、破壊された商業施設の看板が外されていたりと、傷跡は残る。それでも昨日まで燃えていた道を歩く人々の顔に、恐怖の色は見えなかった。
13日にもデモが行われ、一部が暴徒化、警官隊と衝突していた。だが翌日には衝突の現場となったモナス(独立記念塔)周辺の現場にも、大きな傷跡は見えなくなっていた。
州政府職員らの夜を徹した作業のおかげだろう。それでも突如現れ、消えていく「暴動」に、翌日には何事もなかったような顔をする街並みに、不気味さが漂う。(大野航太郎、写真も)