都会の隅の〝エコパーク〟 ごみ銀行にオーガニック野菜 バンテン州タンゲラン市
河川に流出した廃棄物に関する取材を進める中で、バンテン州を流れるチサダネ川の保全活動などを行う民間団体「バンクサスチ」を訪れた。そこに広がっていたのは広大な有機野菜の畑、そして川に息づく人々の昔ながらの営み。都会の片隅にひっそりたたずむ、知られざる〝エコパーク〟がここにはあった。
バンクサスチの事務所があるのは、バンテン州タンゲラン市を流れるチサダネ側の河原沿い。ジャカルタの空の玄関口スカルノハッタ国際空港からもほど近く、辺りには高層ビル郡を望むが、辺り一帯はカンプン(集落)が点在し、川で泳ぐ子どもや魚を獲る漁師、サロン姿で水浴びする人々など、昔ながらの生活があった。
バンクサスチは2012年に設立。国営企業省やバンテン市政府、国営建設アディ・カルヤなどがパートナーとして名を連ねる。もともとは周辺住民が集めたごみを買い取り、リサイクル業者に引き渡す「ごみ銀行」としてスタートしたが、周辺住民や地元の学生向けの環境啓蒙など、徐々に活動の幅を広げた。事務所は一般の人にも開放されており、雄大な川を眺めながらくつろげるテラスカフェや、オーガニック野菜を栽培する畑、養蜂場などを備える、エコパークといった趣だ。
バンドン工科大学が2019年に発表した調査によると、インドネシアが排出するプラスチックごみは年間400万トン。そのうち45万~123万トンが適切に処理されず、海に流されている。インドネシアは中国に次ぐ世界第2の海洋プラスチック排出国という、世界銀行の統計もある。
チリウン川やチタルム川と同じく、ジャボデタベック(首都圏)を通過して、ジャワ海へ注ぐチサダネ川も、こうした問題と無関係にはいられない。9月上旬には、南タンゲラン市のチプチャン最終処分場から、医療廃棄物を含む1トンのごみが川に流出する問題が発生。「少量ながら、医療廃棄物の流出は現在も続く」(バンクサスチのアデ代表)。
ジャカルタ市内から車で1時間半程度。都会の喧騒を抜け出して、環境意識を高めながら〝ちょっと息抜き〟するには本来もってこい。いつもと違う週末のデスティネーションとして、検討してみてはいかがだろうか。(高地伸幸、長谷川周人)
◇Banksasuci Foundation
Jl. Taman Cisadane Gg. Muara Buntu Rt. 003/001 Kel. Panunggangan Barat Kec. Cibodas Kota Tangerang Banten – Indonesia.