「神々が住む島」の魔力 グヌン・カウィ石窟遺跡 バリ州・ウブド
新型コロナ禍の影響もあってバリ島を訪れたのは4年ぶり。デンパサールのンググライ空港に到着したのは午前10時過ぎだったが、真っ先に向かったのは到着ロビー出口のコンビニだった。買い込んだのは缶ビール。「神々が住む島」と言われるが、バリ島には人の心を開放する魔力のようなものがある。
今回のバリ島出張では早朝取材があり、余裕をもって前泊することに。であれば、その日は休日でもあり、朝便で現地入りして以前から気になっていたグヌン・カウィの石窟遺跡に足を向けた。世界文化遺産となった棚田があるプクリサン川流域に位置するバリ最大の石窟だが、山間にあって「延々と階段を登る秘境」と聞き、なかなか訪れる機会がなかった。
移動の足はタクシーとしたが、空港の乗り場で驚いたことが2つあった。まず、空港への乗り入れ業者を限定して高額な料金を設定していたが、なんとブルーバードタクシーが普通にメーター料金で利用できた。
しかも、待機しているのは電気自動車(EV)ばかり。乗り込んだのは比亜迪(BYD)のミニバンだった。そして車窓から見えた駐車場の看板が韓国は現代自動車のEVで、否が応でも中韓勢の勢いを感じる。「日本車王国」と言われるインドネシアに暮らして20年余り。少なからず寂しい思いをした。
気を取り直して、まずはホテルに荷物を放り込み、目指す石窟遺跡、グヌン・カウィ寺院へはバイクタクシーで向かった。ウブドのホテルからは約16㌔の道のりだった。
交通渋滞が激しいデンパサール市内から一転し、あたりは田園風景が広がって肌に当たる風が心地良い。世界文化遺産となった美しい棚田を眺めながらアップダウンを繰り返し、まさにバリの風景に囲まれて気持ちも高揚する。
ところが、ここでハプニングが起きた。日本語で下調べしておいた目的地は「グヌン・カウィ・タンパックシリン」。しかし到着したのは「グヌン・カウィ・セバトゥ」だったのだ。だた、すでに午後4時を回っており、拝観時間に余裕はないが、発想の転換で行ってみることにした。
受け付けで拝観料の5万ルピアを支払い、うっそうと生い茂る木々の抜ける階段を下ること10分弱。突如として視界が切り開け、石窟が見えてきた。
11世紀に当時のワルマデワ王朝が作った石窟は王朝の陵墓。高さは10㍍ほどだろうか。4基が並んでいた。
王朝の陵墓とはいえ、こんな山深い場所に巨大遺跡を建立する——。いったいどれだけの人員を要したのか……。工期はどのぐらいだったのか……。4年ぶりの再訪となるが興味は尽きず、またバリの魔力にとりつかれてしまった。(坂田恵愛、写真も)