刺激求めふらっとスマトラ 思いがけぬ出会いも ランプン州
ジャワ海とインド洋がつながるスンダ海峡。これを横切るフェリーから、スマトラ島に沈む夕陽を見たい。そんな風景を写真に収めようと、ジャカルタから西を目指してハンドルを握った。フェリー乗り場のあるバンテン州メラックは、ジャカルタ日本人学校(JJS)の校外学習で行った思い出の地。楽しい1日になりそうな予感がした。そう、フェリー乗り場に着くまでは。
メラックまで車なら高速道路で一直線。眠気覚ましのコーヒーを調達するため、途中セランで休憩したが、それでも、2時間あまりで到着した。半世紀前のJJSに在籍していた当時は一般道をひた走り、ジャカルタを未明に出発しても到着はもうお昼。急ピッチで整備が進む高速道路網はありがたい。
路面に開いた穴や超低速で走る過積載トラックはなんとかしてほしい。二輪車の通行を解禁してほしい。サービスエリアの案内表示を改善してほしい。言い出せばきりがないが……。
話を戻そう。スマトラ島に渡るフェリーの運賃システムが、少々複雑だった。要は船足が速いエクスプレスと通常タイプのフェリーと2系統あり、アプリで事前入手したのはエクスプレス。所要時間が短いのはありがたいが、最終便は午後4時前。日没前にスマトラ側に渡る必要があることに気づいた。
つまり、スンダ海峡に沈む夕陽を見るという当初の目論みはここで終了。あっけなく崩壊したが、乗船券は購入済みで引き返すわけにもいかない。初カーフェリー、初ランプン州。気を取り直し、新発見を求めて週末の小旅行を続行した。
メラック港を出港すると、左舷側から見えたのはメラックの工業地帯。意外にもエメラルドグリーンの海は美しく、その人工的な空間と自然のコラボが新鮮だった。ところが、スマトラ島に上陸して間もなくすると雷雨。すさまじい雷鳴がとどろき、大地は割れんばかりだ。なんと不運続きな旅と思ったが、豪雨のせいかやがて田園風景は霧に包まれ、水田は絵画の世界のよう。まさに心が洗われるようだった。
日が沈むと頼りは「グーグルマップ」。行き当たりばったりとはいえ、やはり旅の楽しみはご当地グルメだ。美味しい海鮮料理を食べたかった。選んだ先はカリアンダ漁港にある小さなレストラン。素材を選んで調理法を決めると、どっさり野菜を添えてテーブルを埋めてくれた。
ありがちな調味料漬けの料理ではなく、素材を生かしたシンプルな味。撮影用に3品頼んだが、食べ過ぎと知りながら完食してしまった。それに気を良くしたのか、親戚が愛知県で働いているという話好きの店主がやってきて、日本人を褒めちぎる。コラムのネタをたっぷり仕入れさせてもらった。
旅は先が見えないからおもしろい。そう考えると、シナリオは総崩れとなった今回のプチ旅行だが、思いがけない人や風景との出会いもあった。ふらっと地方社会に飛び込むインドネシアの旅。なんとも刺激的でほっとする一時なのだ。(長谷川周人、写真も)