【今日は心の日曜日(75)】孤独な日本人 ㊤
「3月、新学年のスタートを控えて妻子が日本から私の元に合流しました。私自身赴任して半年になりますが、未だに当地での仕事や生活に慣れず、家族を十分にサポートできるか心配です」
お父さまご自身の、仕事の悩みを抱えつつご家族を思う気持ちに、感動しました。よく相談くださいましたね。私自身、こうしたお悩みを持つ駐在員の皆さまのお役に立ちたいという思いから、カウンセリングを通じて具体的対処策をご紹介して参りました。
異文化の中で生活するとなると、ストレス要因はたくさんあります。飲み水に始まり、食べ物、気候、慣習、言葉も違い、そしてイスラム教への理解も不可欠です。日本の職場と異なる環境の中で、仕事を進めようにも思うようにいかず、色々と課題が見えてきた頃なだけに、ご苦労お察しします。
家族帯同が始まるとなると、奥さまの現地生活への順応の問題や、お子さまの教育の問題も降りかかってきます。そうした中で、家族が駐在生活を楽しく過ごせるか過ごせないか、苦難を乗り越えられるかどうかの違いは、どこから来るのでしょうか。
実は、職場や学校、地域で「仲間」を持てるかどうかが、大きな鍵となります。仲間を見つけられないと、人は孤独感を抱えます。人間にとって孤独は闇です。不安や恐れを増幅させ、活力を奪います。駐在員とそのご家族が、多かれ少なかれ、この孤独感を抱えてしまうのは、母国と離れて暮らす以上仕方がないことです。その孤独感が過剰になると、仕事や学業のパフォーマンスを下げ、病気さえ引き起こすことになります。それを防止するために肝心なことが、「人間関係作り」なのです。
実は、今、日本国内で、世代に関わらず、孤独感を抱える日本人が大勢いることが、社会問題となっています。15歳から39歳の日本人の死因の1位は「自殺」です。こんな国は先進国7カ国(G7)で日本だけです。ユニセフによると、孤独感を抱える日本の子どもの割合は29・8%で世界第1位。2022年に、子どもの自殺者が512人と過去最悪の人数となり、しかも自殺要因の6割は「原因不明」です。日本は、心の問題から見ると、世界で群を抜いて深刻な国と言わざるを得ません。
駐在地での生活を漫喫するためにも、やがて帰任する際の準備にも、大人も子どもも、人間関係作りに大切な言葉があります。それは「ありがとう」「ごめんなさい」「助けて欲しい」の3つです。 =続く
(家族関係心理士/心理カウンセラー。高﨑美佳)
〈連絡先〉カウンセリングルーム「ミカモーレ」(fc.mikamour@gmail.com)まで。