夕日が海へ溶ける時間をまったりと バリ 王道と邪道を行く
初めて訪れたその場所は、まるで異国と聞いていたがその通りだった。バリ島三大舞踊の1つ「ケチャダンス」で文化体験をし、熱帯気候では珍しいワイナリーで朝からテイスティングを。ウブドではバギーに乗ってアトラクションを体験。ビーチクラブ「Ku De Ta」では、大音量のジャカルタと違い、耳心地の良い音量の音楽が海風に乗り日没までまったりとした時間を過ごした。
「チャ」「チャチャ」「チャチャチャ」——。男声合唱から始まったケチャダンスをバリ島南端の断崖絶壁に建つウルワツ寺院で観た。白猿「ハヌマーン」が客席に混ざり、客いじりをする場面では「私のところに来てくれないかな」と羨ましがり、クライマックスで敵がハヌマーンを火あぶりにしそうになる場面では、思わず手汗を握る迫力があった。海を背景に行われるケチャダンス。黄昏時には時が止まってみえるほど綺麗な夕焼けが現れる。
ギアニャル県サバ湾沿いにあるワイナリー「サバベイ」は、ワインや蒸留酒を製造している。コーヒー味のリキュールが、お土産で買って帰ればよかったと後悔するほど特別美味しかった。
ここで面白いと感じたのが、「このワインにはサテ(串焼き)、あのワインにはシンコン(キャッサバ芋)」とインドネシア料理に合うワインを提案してくれること。「熱帯気候でなぜワイン?」と思うかもしれないが、国内農業の可能性を広げたいという思いから挑戦したという。この日、ウクライナの隣国、ベラルーシから休暇で来イした人によると「SNSで大人気」とのことだった。
ウブドでは無限に広がる棚田を眺めながら森でバギーを楽しんだ。一人乗りと二人乗りがあり、運転に自信がない人でも後席で楽しめる。公道ではないため、運転免許証は不要。お子さんも挑戦しやすいだろう。
しかし、批判を受ける側面もあるのがこのバギー体験。9世紀から続く伝統的な灌漑システムが評価され、世界遺産に登録されたウブド。バギーの排気ガスや騒音、振動が森の生態系を破壊する恐れがある。
ただ、こうしたアクティビティーが雇用を確保しているのも事実。ウブドの限りある資源で観光客を誘致し、島民が生活費を稼ぐ。脱炭素に貢献できず、雇用機会を創出できない私は批判できないと感じた。
ところ変わって、バドゥン県スミニャックのビーチクラブ「Ku De Ta」。心地よい音楽と海風に揺られながら、夕日が静かに海へ溶ける時間を過ごせる。デッキ下のビーチは驚くほど砂がさらさらで細かく、年甲斐にもなくはしゃぎ、服がずぶ濡れに。次回は水着を持参しなければと反省した。
王道と邪道の両方を体験した初バリとなったが、まだ魅力を感じ切れていない。次回は時間の流れのままゆったりと出かけたいと思った。(青山桃花、写真も)