連合再編の政治駆け引き

 2024年大統領選挙に向けて、政界の動きが慌ただしくなっている。その渦中のひとが中部ジャワ州知事のガンジャルだ。先週発表された、世論調査機関SMRCの最新調査によると、彼は前回3月の調査から4%支持率を伸ばし、人気度トップになると同時に、支持率に伸び悩む2位のプラボウォ国防相と3位のアニス・ジャカルタ特別州知事を大きく引き離した。
 このガンジャル人気を後押しするのがジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領だ。ジョコウィは先月下旬、中部ジャワ州で開催された自らの草の根支援組織の集会で、その場にいたガンジャルを次期選挙で支持する可能性を示唆した。
 しかし、この二人が所属する闘争民主党のメガワティ党首は、ガンジャルを警戒する。彼女の娘のプアン国会議長の地元も中部ジャワで、ガンジャル人気の足元にも及ばないからだ。ガンジャルの人気でプアンの存在がかすれていくことに、母と娘は共通の不安を抱き、ガンジャル不信を露骨に示すようになっている。この意識も働いて、メガワティ側近たちは、次期選挙でプラボウォとプアンの正副大統領候補を擁立する計画を固めつつある。
 それを横目に、別のシナリオを描くのがジョコウィであり、内閣の側近たちだ。ジョコウィの最大の政治的関心は、自らの高い世論人気を保ち、政権末期のレームダックを回避し、次期政権の後見人になることで退陣後の政治的影響力を維持することにある。プラボウォ・プアン構想は、そのビジョンから最も遠い。では突破口はあるのか。ジョコウィ周辺は、ガンジャルを党の束縛から開放し、他党の擁立で大統領候補にする構想を描く。
 先月半ば、与党連合内のゴルカル党と開発統一党と国民信託党が、選挙に向けて新たな連合を作るとし、「統一インドネシア連合」(KIB)を発足させた。ビジョンは「ジョコウィ政権の方針を引き継ぐこと」だという。当然、背後にはジョコウィと彼の右腕ルフット・パンジャイタン海事・投資調整相がいる。KIBの決起集会が今月初めに開かれたが、ガンジャル支持組織の代表も参加していた。明らかに、KIBはガンジャル出馬の受け皿を意図して作られている。
 ただ、誰をガンジャルの副大統領候補にするかが難しい。KIBの3党首は人気もないし、ひとりを選ぶと他の面子も立たない。そのため外から連れてくる案が濃厚だ。当然、軍資金を3党に配れる候補が待望されており、エリック・トーヒル国営企業相などが有力視されている。
 こうして、プラボウォとガンジャルの出馬に向けた動きが加速するなか、第三の候補の動きも直に見えてこよう。アニス擁立の声が、おそらく今週のナスデム党の全国会議で出てくる。党首のスルヤ・パロは、アニス擁立を3年前から公言していた。アニスも党大会に参加してきた。
 ここも副大統領候補を巡って様々な駆け引きがある。ユドヨノ前大統領の息子で民主党党首のアグスが有力だ。ユドヨノ政権で副大統領だったユスフ・カラが、パロやアニスに近いため、ユドヨノもカラ経由でアニス・アグスのペア実現に向けて水面下の交渉を進めている。アニスはイスラム保守層の支持も強いため、福祉正義党も共闘に吸収されていくと思われる。
 このように、まだまだ未知数の部分は多いものの、ガンジャルを巡る動きを契機に次期選挙の構図が少しずつ固まりつつある。今後の動向を注視していきたい。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

メラプティ の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly