MRT全13駅を〝制覇〟 新たな出会いと発見を求めて
中央ジャカルタから南ジャカルタにかけて走る大量高速鉄道(MRT)。延伸工事も始まっているが、2019年の開業以来、通勤や通学などで利用されて市民の「足」として定着した。新たな発見や出会いを求め、日本大使館前にある現在の始発駅、ブンダランHI駅から終点のルバック・ブルス・グラブ駅までの全13駅で下車、駅周辺を巡った。
今回の旅で第一目的地となるのはドゥク・アタスBNI駅。近くにはスカルノハッタ国際空港行きの電車が停車するBNIシティ駅のほか、夜間にライトアップされるトンネルがある。普段トンネルでは、若者を中心に多くの市民が写真撮影を楽しむが、午前10時ごろは閑散としていた。
続くスティアブディ駅から南へ5分ほど歩くと、完成間近の歩道橋が見えてくる。スディルマン通りに架けられたこの歩道橋は、遊び心のある斬新なデザインで、新たな人気撮影スポットになること間違いなさそうだ。
多くの日系企業が入居するビルが立ち並ぶエリアにあるブンドゥンガン・ヒリル駅とスナヤン駅を越えると、アセアン駅に到着する。駅からブロックMに向かって5分ほど歩くと、「M Bloc Market」に行き着く。ここではインドネシア各地から取り寄せたナッツ、乾燥麺、ココナッツオイルなどが販売されている。
店内を物色していると、スタッフが様々な種類のハチミツを試食させてくれた。中でも西スマトラ州から取り寄せられたハチミツは濃厚で絶品。エリア内には飲食店も10店舗以上あり、休日にふらっと立ち寄るのに最適だ。
日本食レストランが点在するエリアにあるブロックM BCA駅を越えると、次はブロックA駅だ。ここから生活臭が漂う庶民の町になってくる。駅付近にある市場で働く「イブ(お母さん)」と出会った。イブは夫が仕入れてきた青果を元値の20~30%上乗せして販売している。路地裏にある市場だが、青果の質が良い。イブの対応はとても丁寧で穏やかな目をしていた。
市場を後にし、次のハジ・ナウィ駅へ向かう。駅から出ると、洒落たカフェが何店舗か営業しているだけ。駅前通りはシャッターが下りた店が多く、コロナ禍で受ける経済的ダメージを垣間見るような思いをした。
終点が近づく中、ここで1つ誤算があった。続くチプテ・ラヤ、ファトマワティ、終点のルバック・ブルス・グラブ駅周辺の開発が遅れていた。邦人が多く住むエリアまでは距離があるようで、駅近くはカンプン(集落)が続き、商業エリアも活気に欠けている。ただ、これもまた新たな発見となった。
さて、実はジャカルタのMRT経験はこの日が2度目だった。留学時代に一度乗ったきりで、乗車券の買うところから新鮮だった。初乗り運賃は3千ルピア(一部区間は4千ルピア)。乗車の際は電子マネーを使う必要があるが、各駅構内の券売機で現金を使い、専用の電子マネーカードを購入することもでき、便利にできていた。
ただ、取材時間が約7時間にもおよぶ長丁場になるとは思わなかった。しかし、各駅で意図的に下車することで様々な人と出会い、町の雰囲気を知り、魅力的な店を見つけることもできた。
完工時期が見えなくなったMRT南北線延長計画フェーズ2。しかし、ブンダランHI駅から西ジャカルタのコタ駅まで開通した暁には、新たな出会いと発見を求めて各駅を巡ってみよう。(長田陸、写真も)