異常気象の政治天気図

 5年に一度の大統領選挙。その周期に沿って「政治の季節」も到来する。その熱い季節は、いつも選挙の1年前ごろに訪れる。ところが2024年選挙を前に、今その季節に入ろうとしている。この「異常気象」の原因と行方を考えてみたい。
 24年は、大統領選挙と議会選挙に加えて全国一斉首長選挙も予定されている。この特異事情による選挙のロジ負担は大きい。それを緩和するため、できるだけ期間を空ける。とはいえ1月と12月はいろいろと年越しのリスクがある。ならば2月と11月が理想となり、大統領と議会の選挙を同年2月28日に実施し、地方首長選を11月に行う案が固まりつつある。
 過去の大統領選は4月や7月や9月に行われた。2月となると年が変わってすぐだ。この選挙の前倒し案が今月初めに示されたことで、次の大統領候補をめぐる動きに火がついた。
 政治の季節の早すぎる到来は、トップランナー候補の不在が背景にある。過去4回行った大統領選では、現職の再選が2回。残りの2回はユドヨノ前大統領とジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)現大統領の各々の初当選だ。両者とも選挙前の世論調査で、他候補を大きく上回る人気を誇っていた。次の選挙に、そういう先頭馬はいない。
 世論調査ではプラボウォ・スビアント国防相、ジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン知事、中部ジャワ州のガンジャル・プラノウォ知事、西ジャワ州のリドワン・カミル知事が、支持率15~10%の間で競る。統計的には誤算の範囲内だ。
 とくに過去2回出馬して負けたプラボウォの支持率は頭打ちだ。逆に州知事たちは各地のコロナ対策で指揮を取り、市民の支持を得てきた。次期選挙までコロナ対応を迫られるなら、彼らの人気はさらに高まる可能性さえある。この拮抗したレースの展開も異常気象の原因といえよう。
 気象レーダーも動き出した。大統領候補を決めるのは政党で、国会議席の2割以上を占める政党もしくは政党連合が候補者を出せる。単独で候補を出せる政党は、元大統領のメガワティ率いる与党・闘争民主党だけだ。同党の動きで他党の出方も変わる。
 党首メガワティの心中は複雑だ。一方で、娘のプアン国会議長への世代交代とプラボウォとの約束を果たすためにも、「プラボウォ=プアン」の正副大統領候補を擁立したい。しかし党内には、独自の大統領候補を立てずに他党の党首プラボウォを担ぐのは、与党第一党として屈辱だという声も強まっている。
もっともな話だ。唯一単独で候補者を出せる政党が、大統領候補を出さないという決断は、党サポーターの幻滅と党首不信を招くだけである。
 では党員で人気のガンジャルを擁立し、第二のジョコウィに仕立てるか。このシナリオを警戒するのがプアン周辺だ。先月末には「ガンジャル出しゃばるな」と不満を顕にした。
 ガンジャル推しだと娘の政治生命を閉ざしてしまう。かといって娘とプラボウォを組ませても、野党が擁立を企図するアニスに大敗する結果が世論調査から明らかだ。突破口は如何に。気象レーダーはキングメーカー・メガワティの一挙一動を静観している。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

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