摩天楼をぬって走る心地よさ 週末のジャカルタ 高架道を自転車に開放
自転車好きには朗報といえよう。林立する高層ビル群の間を縫うように走る〝自転車専用道〟。その常態化が正式に決まった。距離も開放時間も短いのが玉にきずだが、そこから望むのは大都会ならではの非日常的な風景。皮肉にも、閉塞感が漂うコロナ禍あっての行政決断といえそうだが、2回目の試験開放日となった5月30日、まずは走ってみることにした。
首都・ジャカルタを貫く主要幹線道路。この高架部分を自転車専用道として開放するというのが今回の決定だ。区間は日系スーパーなどが入るシティーウォーク・スディルマン前から、カンプンムラユまで約2・3キロ。交通量が少ない土日の午前5時~同8時の間、自転車に開放される。サイクリストたちには、まさに夢のような話だ。
昨年6月以降、新型コロナウイルスの感染拡大で中止に追い込まれたタムリン~スディルマン通りの「カーフリーデー」との違いは、高架から見える風景や適度なアップダウンといった走行環境もあるが、個人的に最大のメリットは、専用道であることだ。
カーフリーデーは道路から車やオートバイを締め出し、市民の健康増進などに役立てるというのが趣旨。したがって、ジョギングをする人も、スケートボートをする人もいる。つまり、自転車乗りからすれば、利用者の圧倒的多数を占めていながらも、安全確保のためには周囲への気遣いが欠かせない。要するに、危なくてスピードが出せないのだ。
これに対して開放される高架道は、自転車専用だから堂々と走れる。利用者が増えてくれば、変わるかも知れないが、今のところ低速で走る自転車や動画撮り目的の利用者は皆無に近い。本格的なロードバイクでびゅんびゅんと走れるから、一列縦隊になって空気抵抗を減らし、競輪選手並みの走りをするグループもいる。
もっとも高架道にはアップダウンがあるから、運動不足の筆者には、悲しいかな時速30キロの維持も苦しい。ペダルを回しながら腹筋への負荷をじわじわと感じていたが、案の定、翌々日は筋肉痛に泣くことになった。
それでも、当夜のビールがなんと旨かったことか。高架道を1往復半走り、8時になって閉め出された後は、接続するスディルマン通りに入った。自転車専用レーンを使って南へ北へ。結局、その日は40キロ近く走り、健康的で気持ちいい日曜日の朝を過ごすことができた。(長谷川周人、写真も)