自国を誇るスーパーマーケット M Bloc Market
南ジャカルタ・ブロックMから大通りに沿って北に行くと、右手に1年半ほど前にお目見えした「mbloc」がある。一歩足を踏み入れると、東京・代官山のように洗練されている一方、原宿の裏通りのようなグラフィティ・アート(落書き)が壁いっぱいに描かれている。集まるのはミレニアル世代。カフェや雑貨店が並び、インスタ映えを狙う若者たちを惹きつける空間だ。そんな場所に新しいコンセプトを持つスーパーマーケット「M Bloc Market」が4月19日、開業した。
店内に入る前、博物館のように示された順路をたどると、重厚で古びた印刷機や裁断機などが展示されたスペースに入る。ここがかつて造幣局だったことを感じさせる展示物は、若者にも歴史を知ってもらうアイディアだ。
自然の緑色や木目調をベースとし、落ち着いた雰囲気の売り場には野菜、肉、魚といった食材のほか、見慣れないものも多く、商品棚に吸い寄せられてしまう。魅力的なパッケージに包まれた国産コーヒーやチョコレート製品の種類は数え切れないほど置かれている。mbloc内ではキャッシュレス支払いのみ受け付けているため、会計もスマートだった。
おしゃれで少し高級なスーパーマーケット。そんなイメージが先行するが、店員のピオさん(25)は「ここの商品の7割以上が国産品」と誇らしげに話す。やはり店員として働くエリヤンティさん(41)は、「大手の業者より中小企業や個人と直接契約を結び、ローカル製品の応援に力を入れている」と説明してくれた。
経営者のホンゴ・エドガー・ウィタクラマさん(34)は以前、mbloc内でコンサートなどを開催してきた。ところが、昨年から始まった新型コロナウイルス感染拡大で、「人を集客するイベントの開催が難しくなった」という。
そこで1年間の構想を経て、倉庫だった場所をスーパーマーケットに改築。古い建物を取り壊すのではなく、原型はそのままにコンクリートの壁を残したりと、古き良き時代の雰囲気を生かすのがエドガーさんのこだわりだ。「建物の再利用。インドネシアではこれからそういった考えが増えていく」と話す。
商品パッケージにモダンなデザインが多いのは「観光客にも定番ではない、目新しいお土産として手にとって欲しい」という思いが込められているからだ。
国産製品や中小企業、歴史ある建物に眠るポテンシャルを引き出すエドガーさん。「ブロックMにいる日本人にもぜひ見に来て欲しい」と自信をもって話す。(三好由華、写真も)