ビリヤード戦法

 「長い駐在生活を家族と過ごしていましたが、コロナ渦に巻き込まれ、妻子は本帰国となりました。離れて暮らしてもう一年になります。近ごろ、子どもたちに電話しても会話が続かず、すぐに電話口から離れてしまいます」
 お子さんの変化に気づけたことも、このままで大丈夫かと心配になった感性も素晴らしいです。人の変化を見て取れることは能力です。
 コミュニケーション能力の低下が社会問題となって随分経ちますが、中でも幼少期の親とのコミュニケーションはとても大切です。親からもらう言葉掛けが子どものセルフ・イメージの高低を決め、その後の人生を左右していくからです。
 内閣府による若者を対象とする自己意識調査(平成26年)では、日本は他国と比べて「自己重要感」が低く、また「悲しさ」「ゆううつさ」といった喪失感情を抱えて生活している実態が明白になりました。
 一方、親が子どもと話をする時間を持てているかどうかで、生活に対する満足度も異なり、学業成績への影響も少なくないという調査結果もあります。特に、ご家庭でお父様が関わりを持つか持たないかで、お子さんの幸福度へ与える影響は大きく、お父様自身が家庭内で蚊帳の外の存在だと気づかないでいると、結果としてお父様自身の仕事に致命傷を与えることにもなりかねません。駐在地にいるからと安易に考えてはいけません。
 今回は、方向性を変える応急処置を教示します。
 まずは、闇雲に話しかけるのでなく、聞くスタンスでお子さんの興味や関心あること、好きなことを話題にするよう心がけましょう。話しやすいからです。
 その際は、子供は日々変化し成長していきますので、その状況を把握しておきたいところです。誰がそれを教えてくれるでしょう。キーマンは奥様。奥様の話の中にたくさんの情報がちりばめられているはずです。
 奥様にしてみれば、ご主人に話を聴いてもらえるだけでも、ひとりで子育てする孤独感が消え、安心感へと変わり、心が満たされます。そうすると、お子さんへの言葉がけも否定的な刺々しい言葉は減り、愛情深い言葉に変わり始めます。もう気づきましたね。お父様の愛情でお子さんのセルフ・イメージを高めてあげる、小さなことから大きな変化が生まれる「ビリヤード戦法」のご紹介でした。(コミュニケーション専門カウンセラー・家族関係心理士 高﨑美佳)
 本稿へのご質問などは、カウンセリングルーム「ミカモーレ」(mamapre12@gmail.com)まで。

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