素材にこだわり、特製ベーコン パサールで豚肉調達 完成まで1週間
世の中には2種類の人間しかいない。「ベーコンを自作する人間」と、それ以外である。と考えてみた記者はこのほど、その前者に仲間入りを果たしたわけだが、ただ作るだけではつまらない。インドネシア産の素材にこだわってみた。
素材にこだわり抜いた特製ベーコン──。食いしん坊ならば、その響きだけでご飯が3杯は食べられるかもしれない。そんな逸品を作るべく、まずは豚肉の調達だ。
もちろん、首都・ジャカルタのスーパーならば輸入品の良質な豚肉が手に入る。しかし、やはり初志貫徹。インドネシア産の素材に固執したい。向かった先は、バンテン州南タンゲラン市の「パサール・モデルンBSDシティ」。いわゆるパサール(伝統市場)の販売形態だが、場内は清潔に保たれ、検温や消毒液の設置といった新型コロナ対策にも余念がない。ここで今朝届いたばかりという、中部ジャワ州ソロ産の豚肉を1・5キロ購入した。1キロ8万5千ルピアだった。
午後、自宅で仕込みに取り掛かった。豚肉の表面をフォークで刺し、塩をたっぷりすり込む。ハーブと黒コショウも一緒にすり込んだのだが、燻製時に香りが飛んでしまった。ここは塩味でシンプルに素材の味を生かそう。仕込みが完了した豚肉はラップできっちり密封し、じっくり熟成させる。仕事から帰宅後、冷蔵庫の豚肉をひっくり返す日々が1週間続いた。
さて、ベーコン作りで豚肉に次いで欠かせないのは燻製材だ。これもインドネシアの素材にこだわった。ティモール島クパン名物で、豚肉の燻製料理「セイ」。これに使うムクロジ属の樹木「クサンビ」の葉を、トコペディアで取り寄せた。
はるばる東ジャワ州から届いたクサンビの葉が半分くらい枯れているなど、さまざまなトラブルを乗り越え、明くる週末、燻製の時を迎えた。
燻製というと如何にもハードルが高そうだが、料理素人の記者でも問題なくできた。編集長宅の屋上で炭に火を起こし、燻製材の葉と豚肉を乗せて蓋をするだけ。時折、空気を送って火加減を調節しながら、コーヒーを片手に〝その時〟を待つ。出来上がりに思いを馳せる、至福のひと時となった。
コンロのふたを開け、2時間ほど燻した豚肉を火から下ろす。ベーコンとなった豚の脂と良質な茶を思わせるコサンビの葉の香りがあふれる。燻製の香りを馴染ませるには、さらに熟成が必要となるが、何はともあれ出来立てを厚切りでいただく。自作ベーコンならではの楽しみだ。
材料調達から熟成、燻製までに1週間と、手間のかかる自作ベーコンだが、ひとつひとつの作業は単純で、誰でも簡単に作ることができる。読者の皆さまも、じっくり〝育てた〟こだわりのベーコンで、気の置けない仲間とすてきな週末をすごしてみては如何だろうか。(高地伸幸、写真も)