働く男は、美しい コロナ終息後の再会を願い ジャカルタの労働者たち
ジャカルタにやって来て約7年、暇さえあれば一眼レフを片手に街を歩いてきた。さまざまな被写体をカメラに収めてきたが、今回は、その中で最も心惹かれた「働く男たち」を紹介したい。新型コロナウイルスの感染拡大は、彼らの生活にも多大な影響を及ぼしている。終息後、元気に働く彼らと再会できる日を願っている。
ドスン、ドスン──。男たちがセメントの入った約50キロの紙袋を積み上げると、粉塵が舞い上がった。季節は乾期。伝統木造帆船「ピニシ船」の船倉は薄暗く、内部は熱気がこもる。大粒の汗を流す男たちの額には、まとわりついたセメントの粉塵が固まっていた。
男たちは一日中、セメントを担ぎ続ける。動労環境はお世辞にも良いとは言えない。しかし、全身の筋肉を躍動させながら、額に血管を浮かべて重荷を担ぐ男たちは、肉体労働特有の充足感に満たされて、活き活きとしている。そしてその姿は、しびれるほど格好よく、そして美しい。気付けば夢中でシャッターを切り続けていた。
マグリブ(日没時の礼拝)の時間を告げるアザーンが鳴り響くと、その日の作業は終了。男たちはピニシ船の甲板でパンツ一枚になって、体を洗う。さきほどまでの屈強な男たちの姿は既にない。ホースで無邪気に海水を掛け合うその表情は、普段私たちが目にする、人懐っこいインドネシア人そのものだった。
男たちは自らを「苦力(クーリー)」と名乗った。かつて大英帝国の植民地などで肉体労働に従事した、中国人やインド人を差す言葉だ。それがインドネシア語で「日雇い労働者」みたいな意味で定着しているとは、夢にも思わなかった。もしかすると、オランダ統治時代のスンダクラパ港にも苦力がいたのかもしれない。ラッフルズがいた時代から脈々と続く、働く男たちの営み。悠久の歴史に、触れたような気がした。
新型コロナウイルスは、いずれ終息する。活力あるジャカルタが戻ってきた時、読者の皆さまも、身近な「働く男たち」と触れ合ってみては如何だろうか。
■働く人たちに支援を!
歌手の加藤ひろあきさんは救援団体ACTと協力し、新型コロナウイルスの感染拡大により収入源に苦しむ、インフォーマルセクターの非正規雇用者や自営業者に向けた募金活動を行っている。
集めた募金は、寄付用のマスクや食料などの購入資金に充てられる。3月22日に募金がスタートし、8日の時点で約3200万ルピアが寄せられている。
詳細は専用ページ(https://indonesiadermawan.id/campaign/653/ayo-lawan-corona-bareng-hiroaki-kato)か、上記QRコードから。(高地伸幸、写真も)