手作り感満載の小旅行 自転車で市街地ポタ スンダクラパ港
ジャカルタ暮らしを始めるにあたり、留意したのは運動不足と野菜不足。仕事もあって簡単ではないが、57歳ともなれば健康維持は軽視できない。そこで1月の正式赴任の際、日本からは自転車を持ち込んだ。
とはいえ、スポーツはこれまで縁遠く、モットーは無理はせず楽しむこと。そして自転車だからこそ見える路地裏の発見ができたら。そんな気軽な気持ちで最初に選んだ目的地は、オランダ東インド会社が建設した北ジャカルタのスンダクラパ港だった。
土曜日の朝9時。スタートは中央ジャカルタのタムリン通りにある日本大使館近くから。気ままなソロツーリングだが、まずはコンビニで水分補充をした。不慣れでもあり、熱中症対策は万全を期すべきだろう。
ジャカルタ特別州内の幹線道路では自転車専用レーンが整備されつつある。週末だから交通量も少なく、グリーンの専用レーンを快走。第1目標とした「モナス(独立記念塔)」を目指した。路面のコンディションは極めてよく、東京でいうなら荒川サイクリングロード並み? 新調したロードバイク用ホイールは、滑るように回ってくれる。風を切って走る気持ちよさ。あの感覚が戻ってきた。
ところが、モナスがそびえる「ムルデカ(独立)広場」にあたりから、異国であることを実感する。
まず記念写真を撮ろうにも、広場だから自転車を立てかける場所がない。モナスを周回するのも気持ちよさそうだが、路面が石畳状でロードバイクには厳しい。諦めて一般道に戻ったが、時計と反対回りを始めるとガンビル駅で迂回を迫られる。しかも、押し寄せるバジャイ(三輪タクシー)の波にのまれて身動きが取れない。吐き出す白煙にたっぷり吸い込み、思わず「健康維持とは真逆じゃん」などと悪態をついてしまう。
緑豊かな「イスタナ(大統領官邸)」を過ぎると、コタ地区に抜けるガジャマダ通りに入る。あとは港までほぼ一直線だが、予想通り、この日もっとも緊張した区間だった。快適な官庁街の道路とは違い、路面は一気に荒れてくる。そもそも順法精神に欠けるバイクや車があまりに多く、最初は冷や汗をかいた。
ただ、流れに乗るコツがわかってくると、意外にもスムーズに走れた。決して安全という訳ではない。あくまでいわゆる自己責任。我が身の安全は自ら守る必要がある。
とはいうものの、走りながらライダーとの会話もあり、昼食の候補店を物色する余裕もあった。運転手にお任せの車移動と違い、五感をフル稼働させる自転車散歩には充実感がある。
ブランチを兼ねた小休止は、ファタフィア広場にある有名店、カフェ・バタビアに。コタの喧噪から逃れ、かつてのオランダ時代を彷彿させるその優雅な空間に身を置くと、心身ともにリセットされた気分になる。そしてここからはスンダクラパ港まで一気に走り、海風に吹かれながら、お約束の木造帆船と愛車のツーショット写真を撮ってみた。
わずか半日ではあるけれど、手作り感満載の小旅行。細心の注意は必要だが、休日の気分転換にはいい。いずれ郊外にも行ってみよう。
(長谷川周人、写真も)