熱帯植物に囲まれて 田園風景を眺めてほっと一息 ボゴール「ルマ・コピ・ラニン」
ジャカルタ特別州から電車で約2時間。西ジャワ州ボゴール県にあるボゴール農科大学のほど近くにカフェ「ルマ・コピ・ラニン」はある。田んぼが続く道の途中、あまり目立たない石の看板が目印。注意していないとあっという間に通り過ぎてしまう。
木漏れ日がふりそそぐ中、石造りの階段をゆっくり降りていく。虫の音や鳥のさえずり、川のせせらぎが聞こえ、どこかなつかしい田舎の風景が目の前に広がる。
ジャワ島とスマトラ島の伝統建築を組み合わせたという木造の店内は、典型的なコーヒー農家の家を模している。心地良いそよ風にコーヒーの香りが混ざり、ほっとする。
店主のテジョ・プラモノさん(49)は、もともと国際農民組織ビア・カンペシーナで働き、農民の権利と生活を守るため、国際的な提案を行ってきた。世界中の農家と関わるなかで考えたことがある。「食べものがどこからきて、どのようなプロセスで、誰が関わって自分の元に届くのか」。それを消費者が知るためには、なんらかの場所が必要と感じたという。
そこでこの店で販売されているコーヒー豆は、生産者の名前と生産地などを明記するようにした。12年に豆の販売、13年にコーヒーショップを立ち上げ、14年には農家向けに豆の品質管理や生産についての指導を始めた。
昨年6月にボゴールの中心地から、川沿いの水田に囲まれた谷にコーヒーショップを移店。インドネシアの各地から取り寄せた、10種類の最高級の豆を販売している。1日平均60~100人が訪れ、自由におしゃべりを楽しんだり、勉強したりしている。
この日のおすすめは、農家のパフェンさんが西ジャワ州ガルット県で生産したコーヒー。バリスタとして働き始めて1年目のセプティアンさん(24)は、「チョコレートのような風味で、深みのあるコーヒーです。コーヒーのことはなんでも聞いてください」と熱心に説明してくれた。揚げたてのピサンゴレン(揚げバナナ)はとろとろで、自然な甘みとほのかな酸味が口に広がり、コーヒーとの相性もバッチリだ。
店の庭には200種以上の植物があり、インドネシアの熱帯雨林の生物多様性の豊かさを肌で感じられる。ジャックフルーツ、ジャンブー、ランブータンなどのフルーツの木や、アラビカ種のコーヒーの木なども植えられている。
コーヒーの試飲や水牛が敷地内の田んぼを耕すイベントも不定期で行われている。テジョさんは「日本には里山の文化があり、自然と共生しながら生活を営んできたと聞いた。ぜひインドネシアのコーヒーと田舎らしさを楽しんでほしい」と話す。
都会の喧噪に疲れたときは、ボゴールを訪れてみてはどうだろうか。ゴルフや植物園に加え、もうひとつ心に優しいほっとする時間。熱帯雨林の田園風景を眺めながら一息ついてみるのもおすすめだ。(佐藤裕菜、写真も)