ジョグジャ発祥の「エスエス」 サンバル36種の店
ジョクジャカルタの学生仲間で食事をする時、「どこで食べる?」「エスエスは?」と、必ず名前の挙がる店がある。「スペシャル・サンバル」、略して「SS(エスエス)」。サンバル36種類をそろえ、「ご飯のお代わり自由」という、学生にとって天国のような店だ。ジャカルタに来て3週間、すでに「エスエス」が恋しい。ジャカルタにも支店があると聞いて、行ってみた。
正式名称は「ワルン・スペシャル・サンバル(Waroeng Spesial Sambal)」。「サンバル」とは、インドネシア料理に欠かせない調味料だ。トウガラシなどの香辛料を石臼ですりつぶして作り、料理に付けて食べたり、スープに入れたり。白いご飯にもよく合う。
「エスエス」の歴史はジョクジャカルタのガジャマダ大学前、テント式のワルン(屋台)から始まった。2002年にオープンし、「学生の街」ジョクジャカルタで瞬く間に人気店となった。
今ではジャワ島に80店余り、バリ島に3店を構える。19年には海外進出もかなえ、マレーシアの首都クアラルンプールに支店を開いた。
ジャカルタではまだあまり知られていないが、ジョグジャでの人気ぶりはすさまじく、混雑解消のために宅配サービス専用の店舗まであるほどだ。
ジョグジャにいる日本人の留学生仲間も、すっかり「エスエス」のとりこだ。週8回、「エスエス」で食事をしたり、各店の味を食べ比べている友人は、「なぜ日本には支店がないのか」と嘆いている。
ジャカルタには、学生の多い西ジャカルタに2店のみ。ジャカルタ進出はまだまだこれからの様子だ。
ジャカルタで最初にオープンしたタンジュンドゥレン店に入り、メニュー兼注文票を受け取る。注文票に自分で「1」「2」などの数字を書き入れる仕組みだ。
サンバル・マタ、サンバル・ケチャップ、サンバル・タフ、サンバル・トゥリ……ずらっとサンバルのメニューが並ぶ。一番人気は、赤トウガラシとニンニクをすりつぶして作る、最も基本的でシンプルな「サンバル・バワン」。ガツンとニンニクが効いている。しょうゆ皿より一回り大きい、厚手の陶器皿にたっぷり盛られて、1皿たったの2500ルピア。
どのサンバルも1皿1万ルピア以下だ。甘酸っぱいパイナップルが入った「サンバル・ナナス・ムダ」、マンゴー入りの「サンバル・マンガ」、これだけでおかずになりそうな、イカの輪切り入りの「サンバル・チュミ」など、変わり種もいろいろあって、選ぶのが楽しい。
サンバルと言えば、「辛い」。メニューの横には「ホラー(恐怖)」「プシン(めまい)」など、「辛さ指標」が書いてある物もある。ただし、ただの「遊び」的な要素が強く、あまり参考にならない。例えば、「サンバル・バジャック」の辛さ指標は「テロリスト」だが、実はそれほど辛くない。辛いのが苦手な人には、トマトの甘みを感じられる「サンバル・トマト」がお薦めだ。
私のお気に入りは「サンバル・バジャック」。「バジャック(bajak)」とは「海賊」で、ご飯が止まらなくなる「飯泥棒」といった意味。コブミカンの葉入りでさわやか、それに、辛過ぎない。
おかずは鶏・牛肉のほか、魚介類、野菜があり、「焼く(bakar)」か「揚げる(goreng)」かを選ぶことができる。ご飯は1人4千ルピア。サンバル、おかず、ご飯。これで、インドネシアの定食セットが完成する。
私の「いつもの組み合わせ」は、「サンバル・バジャック」に、おかずは、甘辛いたれを付けて香ばしく焼いた「アヤム・バカール(ayam bakar)」、カリカリの衣にとろける中味の食感がたまらないナスの天ぷら「テロン・ゴレン(terong goreng)」、白いご飯。
ジャカルタのメニューはジョグジャの「エスエス」とほぼ同じだが、ジョグジャのように「ご飯のお代わり自由」ではなく、追加注文が必要だ。ご飯が足りなくなるのではないかと心配したが、バナナの葉の上にドーンと盛られたご飯はかなりの量で、すっかり満足してしまった。値段もジョグジャに比べると少し高いが、それでも良心的な範囲である。(加藤ひな子、写真も)
Waroeng SS Tanjung Duren Utara
住所 Jl. Tanjung Duren Utara 4 No. 224, Kec.Grogol Petamburan, Jakarta Barat
電話番号 081・125・1500
営業時間 午前10時〜午後10時、金曜は午後1時〜午後10時