ハネムーン期間の評価
プラボウォ政権の発足から、先月末で100日が経過した。民主主義国家では、政権交代後のこの期間を、新婚夫婦になぞられて「ハネムーン」と呼び、比較的高い政権支持率を示す傾向がある。プラボウォ政権のハネムーンには、どのような特徴が見られるのだろうか。
そのタイミングで、2つの世論調査結果が発表された。有力誌コンパスと世論調査機関インディカトールによるものである。共通して確認できるのは、プラボウォへの高い支持率だ。コンパスは80%、インディカトールが79%と、幸先の良いスタートを切った。
世論人気がトレードマークだったジョコウィ前大統領のハネムーン期の支持率は62%だった。プラボウォは、そのジョコウィを上回った。彼の高支持率の背景には何があるのか。
まず、ほぼオール与党体制という状況だ。ジョコウィのハネムーン期の国会は、野党連合が与党連合を数で上回っていた。野党支持者たちがジョコウィを評価しなかったとしても不思議ではない。
逆に、今のプラボウォ政権下に野党はいない。メガワティ率いる闘争民主党だけが唯一立場を明確にしていないが、「閣外協力」は辞さないという。アンチ・プラボウォを掲げる政治勢力がなければ、不支持の世論を動員することも難しいだろう。
また、インフレ率との関係も明らかである。ジョコウィのハネムーン期のインフレ率は約7%と高く、物価上昇により庶民の不満も高まった。それが政権評価に直結した。
今のインフレ率は2%弱。この水準を維持できれば、ある程度の支持率を確保できる。ジョコウィ時代の経験則だ。
興味深いのは、社会階層別の支持率だ。現政権への満足度は、低所得者層で86%と最も高く、高所得者層では67%と最も低い。その差は16ポイントと大きい。ここからプラボウォ支持の実態が浮かび上がる。それは、彼の数々のポピュリスト政策が低所得者層に刺さっており、支持率の押し上げに大きく貢献しているという構図である。
無料給食プログラム、無料健康診断、医療の現金給付支援、食糧支援、教育支援、コメ配給など、あらゆる種類の社会支援が「国民中心のプラボウォ政権」の名の下で、低所得者層に向けてアピールされている。国民の多くがこの層に属していることを考えれば、ターゲットとしては妥当であり、高い期待と支持率も理解できよう。
しかし、その高支持率には代償も伴っている。ほぼオール与党体制の形成と維持は、大臣ポストの爆増で可能になっている。その副産物が省庁の新設と分離で、政府機構が肥大化している。
結果、予算が半減した省、権限の重複や喪失で混乱する省、人員も設備も全く不足している省など、カオスと非効率の深刻化が著しい。
実際、無料給食にせよ医療支援にせよ、末端まで行き届いていない、あるいは実施が円滑に進んでいないとの報告ばかりが上がっている。大混乱の中、問題をきちんとフィックスできる状況にないと、内務省の幹部も漏らしている。
その実態を踏まえると、今のハネムーン祝儀は、どれだけサステイナブルなのか。疑問が残ろう。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)