蒸気機関車と製糖工場の盛衰 ソンドコロ・サトウキビ農場観光公園 汽笛音に誘われて
2023年が明けました。インドネシアでは新型コロナウイルスの感染予防対策として制限していた移動や社会活動の撤廃が発表され、これまで旅行や出張を決めかねていた人にとってもついに再起動のタイミングの到来です。引き続きマスクの着用は推奨され、国民にとっても、3年近くの間に身に着けた社会的距離の確保やオープンエアーでの飲食・活動を好む傾向はアフターコロナのライフスタイルとしてしばらく定着しそうです。そんな新しい時代の幕開け、本年最初のおすすめ観光情報は中部ジャワにあるソンドコロ・サトウキビ農場観光公園を紹介します。
ソンドコロ・サトウキビ農場観光公園(アグロウイサタ・ソンドコロ)は、中部ジャワ・ソロ市の市街地や空港から車で約30分のところに位置する、サトウキビ農場と製糖工場について学ぶことができる農業観光公園です。「アグロウイサタ」とは、日本語にもあるアグリツーリズムとして注目を集めているアグリカルチャー(農業)とツーリズム(観光)リズム(観光)を足した造語「農業観光」のことで、オランダ統治時代よりお茶やコーヒーのプランテーション農業が営まれていたインドネシアは、教科書の中でしか知らなかった大規模農業の歴史や現場を訪れ、観光しながら学ぶことができる農業観光の宝庫ともいえます。
ジャワ島には、インドネシア全体の栽培面積の半数以上を占めるほど広大なサトウキビ農園があるのだそうです。ただ、そうした中でも歴史の流れの中で閉鎖されてしまった製糖工場跡や使用されなくなったサトウキビ運搬用の機関車を展示する農業観光公園がいくつもあり、過去のおすすめ観光情報でもプルウォダディ製糖工場やジャティバラン製糖工場跡などを紹介しました。今回紹介するソンドコロ・サトウキビ農場観光公園は、遊園地のように製糖工場の機械、機関車、線路などが置かれていて自由に触れたり乗ったりできるほか、ホームステイ用の宿も併設する、歴史好き、文化好き、鉄道好きはもちろん、地元の子供たちにも旅行者にも魅力満載の公園になっています。
しかし何といっても、ここの目玉はサトウキビ運搬用に使用されていた蒸気機関車、サトウキビ鉄道の乗車体験です。公園入口から少し奥へ行くとさっそく蒸気機関車が見えました。よく見ると、もくもくと白い蒸気を上げています。え? 置物ではないの? 動いているの? 本物? 思わずびっくりしていると、ポーッ、ポッポー!!! キレイな高音の汽笛を上げて「乗らないのか~い?」とお誘いの声です。サトウキビの輸送手段の多くは、蒸気機関車、ディーゼル車、トラックと変貌し、100年以上も前の機関車などは整備も難しいはずなのですが、そんなことはなんのその。ポーッ、ポッポー、元気いっぱい、高音の汽笛を鳴らしています。興奮しながら乗車券を買い乗り込むと、いざ、発車の時間になりました。
ポッポー! 走り出した蒸気機関車。遊戯エリアから出ると細い壁と壁の間を抜け、トンネルに入りました。日光を遮られた真っ暗なトンネル内に屋根や壁の隙間から細い光だけが差し込んできます。ポッポー! 力強い汽笛が鳴り、期待もさらに高まります。辺り一面が明るくなりトンネルを抜けました。すると目の前に広がっていたのは草野原の別世界。ガタガタと心地良く揺れる客車、置き去りのキャレッジ、朽ちた工場跡、ちょっとムワッとしているけど気持ち良い風、鳴り響く汽笛…。約20分の乗車は、ヴィンテージ映画を観たような、サトウキビの甘い香りが今にもぷ~んと漂ってくる儚い夢でも見たような、近代的な高層ビルに囲まれてエアコンに震える大都会ジャカルタから一変、あまりにも非現実的な体験でした。
歴史の証人、ジャワのサトウキビ大規模農園で活躍した蒸気機関車と製糖工場の盛衰。皆様もぜひソンドコロ・サトウキビ農場観光公園を訪れてみてはいかがでしょうか。なお、運行予定は予告なく変更される可能性もあるとのことですので事前確認を。 (日本旅行インドネシア 水柿その子、写真も)
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