インドネシア映画の世界へようこそ 中部ジャワ ガンプロン・スタジオ・アラ厶

 映画と言えば、と問われたら、一般的なところではハリウッド、フランス、インドあたりのヒット作が頭に浮かびます。しかしせっかくインドネシアと関わりを持ったご縁、近年じわじわと存在感が増しているインドネシア映画の世界にひょいっと飛び込む不思議体験はいかがでしょうか。今回のおすすめ観光情報は中部ジャワのスレマンにあるガンプロン・スタジオ・アラ厶を紹介します。

 ジョグジャカルタの中心部から約20キロ、ジョグジャカルタ新国際空港からは約30キロ、40分ほどのエリアに位置するガンプロン・スタジオ・アラ厶。周りを田んぼに囲まれた長閑な風景の中、面積約2・5ヘクタールの敷地に映画撮影用の街並みが作られ「インドネシア版ミニハリウッド」などの愛称で地元の観光産業に一役も二役も買う名所になっています。
 ガンプロン・スタジオ・アラ厶で撮影された代表作は、『人間の大地』。文学者プラムディヤ・アナンタ・トゥールが書いたインドネシア小説の最高傑作と称される同題名の小説を、巨匠ハヌン・ブラマンティヨ監督が2019年に映画化した話題作です。最近では6月に封切られたハヌンブラマンチョ脚本監督の『ゴウォック・ジャワのカーマストラ』。映画を観た方ならここはあの場面…と思い出すかもしれません。
そんな敷地内はポツンポツンと建つ割れ門などのスポット的オブジェクトとうまい具合に街並みになっている建造物がバランス良く配置されていて、無料で出入りや写真撮影ができるパブリックな街並みエリアと有料のアトラクションで構成されています。
 入場して最初に一段と目を引く路面電車は来客が心待ちにしているアトラクションのひとつ。1900年代初頭の世界に連れて行ってくれるレトロ感満載のこの電車は切符を買って乗車します。ガタンゴトン…ゆっくりとゆっくりと揺られながらセットの街並みを進んで行くとなんだから映画俳優になった気分に…。
 アンティークの家具や調度品が置かれたオランダ植民地時代の豪邸、使用人が料理をする質素な調理場などもとてもリアルで当時の温度まで感じるほど。川沿いに形成されたいわゆるスラムの家屋には無造作に干しっ放しにされた薄汚れた服や色褪せた生活用品が。計算し尽くされたそれらの配置はアイ・キャッチングで質素なはずのスラム街もビジュアル的に美しく写真映えします。インドネシアで裏道散策をしたことがある方なら誰もが共感するような日常風景の気持ち良い再現風景。いくら写真を撮っても人様の生活空間を盗み見してしまっている罪悪感がない、純粋な好奇心だけで進んで行ける偽造街歩きです。
 ダウンタウンに戻りましょう。時代を感じる繁華街には靴屋、おもちゃ屋、レストランに映画館。ビンテージの車に屋台の物売り。不意にミュージカルでも始まりそうなレトロポップな街並みに思わずニヤニヤしてしまいます。
 施設全体の中でも圧巻なのはお化け屋敷。ホラー映画好きのインドネシアならではのさすがのクオリティとでも讃えるべきでしょうか。入場前の案内役の形相からして恐ろしく、中に入ると作り物とは知ってはいても心臓バクバクの恐怖があり、不覚にも叫んでしまいました。現在撮影進行中の映画があるということで館内は撮影NG。もしも写真を撮っていたらもしかして作り物以外の「何か」が映っていたのかも、とさえ思ってしまうほど。真相は…永遠のミステリーですね。
 どこまでが本物でどこからが作り物か。
 迷い込んだ映画の世界、ぐるぐる周ってその答え合わせをしたがる感覚が面白い。全体を写真を撮りながら周るとざっと2時間程度、たっぷり遊べるガンプロン・スタジオ・アラ厶。皆様もぜひ、遊びに行ってみて下さい。(旅とアートのクリエイター・ライター 水柿その子 写真も)

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