歴史的大街道の中華街 西ジャワ州ボゴール スルヤクンチャナ通り

 ボゴール植物園の南、ボゴール最古と言われるショッピングモールや庶民の台所の巨大市場、生活用品もグルメも揃う小売店が密集する賑やかなエリアに一本スルッと延びる道。今回のおすすめ観光情報はインドネシアの重要な歴史街道、西ジャワ州ボゴール市のスルヤクンチャナ通りを紹介します。

 古くから中国商人が商売に励み、現在は別名「ボゴールの中華街」とも呼ばれてボゴールの観光地のひとつになっているスルヤクンチャナ通り。入り口ではパッと目を引く中華門が訪問者を歓迎し、くぐり抜けたすぐ左手には1853年に建立されたという中国寺院、ヴィハラ・ダナグンが位置しています。スルヤクンチャナ通りの始まりはこのヴィハラ・ダナグンよりさらに昔、今から200年以上も前に遡ります。
 1808年、フランス革命直後の混乱で東南アジアへの進出を進めていたイギリス東インド会社からの防衛という大きなミッションを背負いオランダ統領インド総督として着任したヘルマン・ウィレム・ダンデルス。彼はさっそく防衛強化のためにスラバヤやスマランに兵器工場を建設したり、バタビア城の移転を実行します。
 そして、ジャワ島を西は現在のバンテン州アニエールから東は東ジャワ州パナルカンに繋ぐ1000kmにおよぶ道路建設も手がけ、何万という労働者が犠牲になるほど過酷な労働だったという建設工事をもって貫通したこの道路を「郵便大通り」と命名しました。スルヤクンチャナ通りはこの「郵便大通り」の一部だったのです。
 その後、「郵便大通り」は行政区分や時代の変動で何度か名称を変え、現在の同区画がスルヤクンチャナ通りとなったのは2016年のこと。同時にボゴール市政府が文化遺産地区に指定しました。
 そんな歴史を物語るかのように、スルヤクンチャナ通りには新旧、尼、蘭、中、日など様々な文化が混ざり合い、ひたすらなまでの活気と懐かしさが満ち溢れています。コロニアル調の洋館、長屋敷の住居兼店舗、今も昔もインドネシアの発展を支え続ける自動車や電機メーカー名、店舗名の看板はレトロなフォントもそのまま。いかにも年季がありそうな雑貨屋、靴屋、文具屋、食堂、古い建物を今風のレトロモダンに改装したお洒落なカフェ。路上商人や屋台の数々の中にはボゴールの御当地料理やここでしか見られない珍しい果物が並び、食べ歩きやお土産探しにも面白さが尽きません。
 ところで、ヘルマン・ウィレム・ダンデルスの代表的な業績は、ボゴール宮殿本館の2階建てへの改築、左右の翼の増築なども挙げられます。各国政府要人のインドネシア訪問時に会議などが行われ、閣僚会議や迎賓館としても利用されるボゴール宮殿。23年、天皇皇后両陛下がインドネシアご訪問の際にも歓迎行事が臨まれたことで日本でも報道されたことは記憶に新しく、その優美な建築が多くの人の目に映ったことでしょう。
 このようにボゴールの街の随所にも今に続く功績を残したヘルマン・ウィレム・ダンデルスですが、1811年に香辛諸島へのイギリス軍侵攻を止められなかったことを理由に帰国となりました。時はオランダ本国が弱体化していた時代。スルヤクンチャナ通りの先、抜けるように見晴らすグデ山のそのさらに遠くにはまた、激動する欧州の歴史絵巻も見え隠れするようです。スルヤクンチャナ通りの散策にはとっておきのお宝体験がぎっしり詰まっているのです。(水柿その子 写真も)

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