予断許さぬ抗議デモ 波状的に続く政府批判
政府は9月3日、燃料油価格の値上げに踏み切った。新型コロナウイルスへの対応で財政はひっ迫。補助金を投じて価格安定を支えてきた政府にとり、苦渋の選択だった。
補助金対象の燃料油で値上げしたのは、軽油とオクタン価の単純比較では日本のレギュラーガソリンに相当するプルタライト。
コロナ禍で経済が停滞する中、低所得層の生活は追い詰められている。感染拡大が一服して経済活動が再始動した矢先、食料油が値上げの口火を切った。
ここに追い打ちをかけたのがウクライナ戦争だ。コロナ後のインフレが加速する中、閣僚発言などを通じ政府は値上げを予感させる観測気球を打ち上げてきた。
神経を使ったのはプルタライトが庶民の足として経済の底流を支えるから。循環が崩れれば、国民の反発が強まるのは容易に予想できた。しかも、値上げは約3割。庶民の驚きと怒りを買った。
値上げ撤回を求める抗議デモは当初、参加者の多くは組織動員された参加者で、緊迫感はなかった。警官隊の装備を見ても軽装だ。だが、デモ隊は完全包囲されており、付近には兵員輸送車や放水車を配備。暴徒化は力でねじ伏せる構えを崩していない。
しかし、世界的なインフレが沈静化する状況はなく、波状的に続く抗議デモは不足の事態も排除できず、予断を許さない。2年後の任期切れを控えたジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領にとり、舵取りを誤れば命取りになりかねない。(長谷川周人、写真も)