聖なる月 ラマダン入り ウィズ・コロナの2度目
人口約2億7千万人のインドネシアでイスラム教徒が占める割合は87%。国教ではないが、世界最大のイスラム人口を抱えるこの国は13日、約1カ月間のラマダン(断食月)に入った。イスラム教の重要な宗教行事であり、ウィズ・コロナ時代に迎える2度目のラマダンとなる。
クナパくん ラマダンの語源からおさらいしたいね。
記者 イスラム暦の9月の意味だよ。預言者ムハンマドにコーランが啓示された「聖なる月」だ。イスラム教徒はこの間、日の出前から日没まで飲食や喫煙を断つ。怒ることも、日中は性交渉も慎む。自分の唾を飲み込むこともタブー視する人もいるね。つまり欲望に打ち勝って自らを制御する特別な期間で、イスラム教徒に課された義務の「五行(信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)」のひとつだ。インドネシア語では断食をプアサというね。
クナパくん 1日の流れはどうなるの?
記者 日の出とともに断食に入るから、夜明け前に家族で軽い食事をする。サフールと言うよ。食事の後は二度寝する人が多いね。禁欲の日中は、コロナ禍で例年とは少し様子が違うけれど、普段通りの通勤、通学となる。そして日没後はその日の断食が明け、イフタールという食事を摂る。まず水を飲み、いよいよ食事だね。ただ、空腹状態だから一気に食べると胃に負担がかかるから、ナツメヤシの実など甘いものから始めるね。僕はココナツミルクで作るコラックが好きだな。
クナパくん コロナ禍だから仕方がないけど、モスクに行く人も増えるね。
記者 ラマダンはそもそも、欲望を乗り越えてイスラム教徒であることを自覚したり、貧しい人々や飢えた人々に対する思いやりを養うためでもある。世界のイスラム教徒と連帯感を強め、宗教心を高める期間でもあるから、モスクなどの礼拝所で行う集団礼拝には大きな意味があるね。コーランを開いて勉強する姿も、普段に増して見られるようになるよ。
クナパくん ラマダン中も営業する食堂もあるのは?
記者 まず理解したいのは、インドネシアの国是は「多様性の中の統一」であるということ。イスラム教徒にも異教徒を否定しない寛容性が求められるんだ。最近は少し変質してきたと心配する声もあるけれど、ラマダン中も営業を続ける食堂は少なくない。ただ、カーテンや垂れ幕を使って内部が見えないよう、配慮しているね。酒を提供する店ではガラス製のコップを使うのを控え、陶器などに代えて中の飲み物が見えないようにしている。
クナパくん イスラム教徒の前で飲食を避ける気遣いは必要だね。相手の信仰心を敬うことで、円滑な関係を築けると思うよ。
記者 そうだね。ただ、残念なことに治安が悪化する時期でもある。近年はイスラム過激派によるテロが続発する傾向にある。
クナパくん 日本大使館もテロへの警戒を怠らないよう、注意喚起しているね。一般犯罪も増加する傾向にあるから注意が必要と領事部メールに書いてあった。
記者 ラマダンが明ければレバラン(断食月明け大祭)だ。今年も帰省は禁止されたけど、コロナ禍が1日も早く収束して、またみんなが安心して家族の元に帰り、レバランを祝えるようになるといいね。