2期目の船出を前に

 ようやく選挙に最終決着がついた。集票はイカサマだと訴えていたプラボウォ陣営に対して、憲法裁判所は6月27日、敗訴の判決を下した。これでゲームオーバー。ジョコウィ大統領の再選が正式に確定した。
 第2期ジョコウィ政権はどのようなものになるだろうか。二つの可能性が考えられる。
 ひとつは、2期目ではじけるパターン。つまり、大統領のリーダーシップが強化され、これまで手をつけられなかった本丸の行政改革をガシガシ進めていく可能性だ。
 その根拠はいくつかある。まず今回の選挙は、前回と違って自力で勝利をもぎ取ったものである。前回は、所属政党の党首に出馬を要請されて選挙を戦ったチャレンジャーだった。今回は違う。現職の信任投票として勝利を手に入れた。2005年以来「選挙で負け知らず」の偉業も達成した。
 連立与党の多くも、今回は「選挙に強いジョコウィ」の恩恵で国会議席を増やしている。その力関係からしても、ジョコウィの政治的立場は強化され、リーダーシップを発揮しやすい環境が生まれると考えられる。
 また、次期国会では野党勢力も弱体する。ユドヨノ前大統領率いる民主党は、与党連合に入る見込みだ。野党はプラボウォのグリンドラ党と、急進派イスラムの福祉正義党だけになる可能性が大だ。
 このように、自力で選挙で勝ち、与党連合は強化され、野党は弱まり、そして2期目で「失うものはない」という状況から、ジョコウィの強いリーダーシップが期待できるという展望が生まれている。
 政権の継続は経済政策の継続でもあるので、ジョコウィのリーダーシップ強化への期待は、国際社会やエコノミストに広く共有されている。
 しかし、逆に2期目ではじけないパターンも十分ありえる。これを「ユドヨノ・シナリオ」ともいう。ユドヨノも2期目をやった大統領だ。彼は「失うものはない」状況で、リーダーシップよりも、退任後の保身を見越した政治をやった。そのために巨大な与党連合を作って「仲良し」安定政権を貫いた。その結果、政治は安定したが、改革などは進まなかった。
 ジョコウィも、そのわなにかかる可能性がないとは言えない。与党幹部は、次期内閣で閣僚ポストの増配分を要求している。ジョコウィを擁する闘争民主党は、今の4閣僚からの倍増を迫っている。
 副大統領となるマアルフ・アミンには民族覚醒党がついており、ここも「勝利の配当」として、現在の閣僚3ポストからの倍増を主張する。ゴルカル党も、前回と異なり今回はジョコウィ支持で選挙を助けたという理由で、今の2ポストからの倍増を要求する。
 こういう圧力を跳ね返し、逆に非政党人の専門家閣僚を増やして、改革に向けてのリーダーシップを発揮できるのか。そういう政治をやるには、強固な支持基盤が必要だ。ジョコウィにそれがあるか。決してイエスとは言えない。これから作るにしては遅すぎよう。
 もう2年後には、ポスト・ジョコウィをにらんで、政界は「次の神輿(みこし)」を選定する政治に没頭する。自ら政党を持たないジョコウィに、隠居後の影響力を期待する人はあまりいない。そういう政界エリートに囲まれながら、政治的求心力を保つためには、よほどの政治力が必要であろう。
 その力をジョコウィは持っているかもしれない。でも、もしなければ、リーダーシップ発揮どころか、与野党が繰り広げる党利党略の政治ゲームに巻き込まれ、2期目の期待はむなしく散り去っていくことになるかもしれない。(本名純・立命館大学国際関係学部教授)

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