【人と世界ー顏】 店でも家でも「お母さん」 ディニ・クルニアサリさん(35)
夫と別れたのを機に、2007年に故郷の南スラウェシ州マカッサルからジョクジャカルタ特別州に引っ越し、家庭料理の屋台「ヌサンタラ」を開いた。目抜き通りのマリオボロ通りから、車で約10分。店の周りには、インドネシア・イスラム大(UII)や私立開発大(UPN)の学生が入る下宿が軒を連ねる。
正午を過ぎると、腹を空かせた地元の学生たちが押し寄せる。「あなたはいつもの(料理)でいいわね」。学生中心の客はすべて顔なじみ。顔を見れば、何を食べたいかが分かる。人気メニューは、母から受け継いだ故郷の「チョト・マカッサル(牛肉スープ)」。空きっ腹をやさしく温めてくれる。常連客の女子大生は「皆の顔を覚えていて、お母さんみたい」と話す。敷居が低く、誰もが食事できる店にしたい。
ジョクジャは伝統文化が色濃く残り、市街地から村落が近い。連れそう2人の息子が幼いころからインドネシアの歴史文化を身近に触れることができ、美しい自然に近い環境で生活できる。午後2時、息子たちを迎えに行く時間。オフィスでなく、ワルン開業を選んだのも子どものためだ。今日も、学校帰りの息子たちをチョト・マカッサルで温めた。(ジョクジャカルタで上松亮介、写真も)