点ではなく未来へ続く線上に ボゴールから紐解く歴史 「英雄の家」
デジタルの時代だからこそ紙の本に再び注目が集まっているのか、インドネシアでじわじわと起きている図書館ブームの話題を昨年11月4日付のおすすめ観光情報でお届けしました。ミーティングも授業も人と会うのもオンラインで可能となる中、液晶画面を通してではなく肉眼で見る物、実体験する物にも改めて価値が見つけられる気もします。今月のおすすめ観光情報は西ジャワ州ボゴールにオープンしたばかりのブミ・パラウィラ・ギャラリーを紹介します。
世界各国の要人のインドネシア訪問時に式典などが催されるボゴール大統領宮殿や東南アジア屈指の植物園が有名な西ジャワ州ボゴール。ジャカルタ中心部から約60㌔で車では約1時間半から2時間、ジャカルタのコタ駅からでも鉄道70分から90分ほどで行くことができます。
その鉄道のボゴール駅から徒歩5分程度のところにあるボゴール図書館は市民が本と親しむ場となっていることはもちろん、教育の場、地域の歴史や文化を学ぶ場としても大切な役割を担っています。この図書館施設にことし1月、ブミ・パラウィラ・ギャラリーがオープンしました。「ブミ・パラウィラ」が意味する「英雄の家」のとおり、このギャラリーでは主にボゴールの歴史とボゴール出身の英雄について紹介しています。
ギャラリーの入り口は光のトンネル。未来的なのか、はたまたタイムマシンをイメージしたのか、インパクトの強さと写真映えする「つかみ」で入場者の期待を高める仕組みのようです。その後、ボゴールと西ジャワ一帯の過去の王国を紹介する絵地図で歴史絵巻の世界に突入です。
1533年に作成されスンダ語で書かれているという碑文石のレプリカ展示ではスンダ語の解説と英語を含めた音声での内容案内もあり興味をそそられます。また、インドネシアは「多様性の中の統一」を国是とし宗教や民族の違いを寛容するとしていますが、歴史上ボゴールにおいてもキリスト教徒、仏教徒、ヒンズー教徒など他者を認め協調共存していたという描写、日本軍政時代、独立、その後の現代への歩みなど、歴史的場面がどれも美しい絵画で切り取られています。各絵画のキャプションを頷きながら読んで鑑賞を進めて行くといつしか大きな教科書の中を歩んでいるようです。
展示の中でひときわ大きな音声が聞こえてくるエリアがありました。1943年製の当時インドネシア国民も実際に聞いていたというラジオだそうで、臨場感あふれる音声には「ムルデカ(独立)」の言葉。終盤、人類史上未曾有の事態だった新型コロナウイルスについての展示へと繋がりアーチを抜けると明るい外からの光が差し込み出口へと続きます。視覚からだけではなく音や光といった様々な要素からボゴールの歴史を軸にインドネシアの歴史、日本との関わり合い、そして、過去や現在は点ではなく未来へ続く線なのだと、私たちもその線上にいるのだと白紙のページを残しているようでもありました。皆さまもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)
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