郵便局から知る歴史 貴重なコレクションも カフェ、博物館など

 ピカピカの高層ビル群が日差しを反射し四方八方へ都会ビームを解き放つ、時としてそんな輝く未来都市的な風景を創り出すジャカルタ。デジタルの世界で画角や色彩が加工された写真や映像を目にすることも増え、旅行さえもバーチャルで楽しめる時代。だからこそ、インドネシアでもここ数年、歴史的・文化的な物の価値を見直し、肉眼で見るからこそ、実際に体験するからこそ得られるリアルなインドネシアを再評価しようとする動きが注目されています。今回のおすすめ観光情報では中央ジャカルタで古い郵便局の建物を改装してカフェとして営業している「元郵便局のカフェ」と郵便にまつわる博物館もあわせて紹介します。

 ジャカルタを代表する由緒ある高級住宅街の代名詞、中央ジャカルタのメンテン地区。在外公館、官僚や財閥の邸宅などが並ぶ閑静なエリアにはジャカルタ最古と言われる喫茶店や映画館が現在でも営業をしています。そんな気品と優雅さが今も残るメンテン地区のチキニ・ラヤ通りの角地に立つのが1920年に建設された「チキニ郵便局」。緑の街路樹を前景に白壁の欧州風の建物がちょこんと上品に佇んでいます。オランダ植民地時代の開業当時はこの住宅街に住むオランダ人や商人などが手紙や商品を送るために利用していたという郵便局で、日本軍占領下にも郵便局の役割を継続して使用されていたのだそうです。インドネシア独立後、スマートフォンも電子メールも一般的ではなかった2000年代初頭頃にも巨大な段ボールが次々と運び込まれていたり、一般の人々が小包や手紙を送るための行列を作って賑わっていました。その後の時代の流れで郵便の利用者は減少し、閑散としていることも多くなってきたところで近年のレトロブーム。この貴重な建物や当時の調度品などを活かし、以前のようにまた多くの人々に集まってもらうための場としてカフェのオープンとなったのでしょう。
 店内に入るとそこはまるでギャラリーのよう。いたるところが和尼蘭中の様々なアンティークの食器、美術品、調度品などで飾られています。カフェオープン用に新規調達したのか昔から使用されていた物なのか、コーヒーを淹れる器具なども見分けがつかないくらいインテリアの中で馴染み、調和しています。着席してくつろいでいるカフェのお客さんたちを避けながら所狭しと飾られた壁や棚をめぐるのは気も使いますが、例えば風景写真では「これはどこだろう」、日用品では「いつ頃のものだろう」と想像しながら見るのはアート鑑賞の気分そのもの。建物に残るステンドグラスやレンガの壁、展示物として置かれているホーローのキッチン用具なども古い映画セットのようで、今となってはどこででも見られる物ではない貴重なコレクションなのかも。インドネシアの歴史好き、アート好き、そしてカフェ好きにも興味深い居心地の良い空間でしょう。
 郵便局が再開発されたスペースとしての成功例では、真っ先に浮かぶのがパサールバル地区の「ポス・ブロック」。ここではアートや本のイベントなどが定期的に開催されています。インドネシアの郵便の歴史をより詳しく紹介する施設としてはバンドンにインドネシア郵便博物館があります。また、南ジャカルタのタマン・ミニ・インドネシア・インダ―には一枚一枚に背景やストーリーが詰まったインドネシアの切手を展示する切手博物館があります。
 かつて、クリスマスカードなどの季節の挨拶や仕事関係の書類も封書で届くことが一般的だった頃は郵便は大切なインフラでした。異国の地で受け取る郵便物に貼られたインドネシアの果物、花、動物などが描かれた切手はどれも珍しくそれが楽しみでもありました。インドネシアの郵便局では現在も国家イベントや時代が変わるタイミングなどで記念切手を販売しています。ぜひ皆様も郵便にまつわるカフェや博物館をインドネシア滞在中の「行ってみたい」リストに加えてみてはいかがでしょうか。(水柿その子 写真も)

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