夕暮れ時の観光遊覧船 日本の屋形船にインスパイア 北ジャカルタ
高層ビルや巨大ショッピングモールなどの近代的建築物とその裾野に広がる裏路地住宅街、二輪四輪が埋め尽くす道路に緑豊かな雑踏……ジャカルタの景色といえば目に浮かぶのはこんな風景ではないでしょうか。試しにいくつかのキーワードで検索してみても、ぱっと出てくるのはそうした都心部の画像ばかり。ですがそれでは少々もったいない。ジャカルタはジャワ島北海岸線のうち面積514平方㌔のジャカルタ湾を囲む海岸線の一部と「千の島」として知られ週末旅行にも人気のプロウスリブの島々も行政区に有する海の街でもあります。今回のおすすめ観光情報は、そんなジャカルタの海を気軽に楽しむことができる観光遊覧船を紹介します。
ジャカルタの中心部、独立記念公園から旧市街コタ地区方面に北上し、さらに北西に進むと、6月に天皇皇后両陛下がインドネシアを訪問された際に視察されたことでも報道されたプルイット排水機場があるプルイット貯水池方面に向かいます。このあたりに来ると、独特の日照りや空気感がなんとなく海の近さを感じさせてくれる気がします。
大通りをあてにしながら海岸線にたどり着くと、昔ながらの暮らしをしている人々の居住区(カンプン)や漁港に生活感がみなぎる一方、整備開発が進んだ区画には私設のマリーナや船の係留施設を有している住宅や商業施設があり、そうした邸宅や施設では自家用ボートでクルージングを楽しむというライフスタイルを持つ人たちが生活しています。
2000年代初頭、当時聞いた話によると、アジア通貨危機を発端とした1998年のジャカルタ暴動を機に富裕層の華人の間では万一の非常時にすぐに国外避難できるようにとジャカルタ中心部から離れて、より空港に近い地区に転居を好む傾向ができたそうです。そんな中でも、プライベートバース(係留施設)付邸宅は万一陸路が閉鎖されるような非常時でも自家用ボートで脱出できるということで注目を浴びているとのことでした。
さて、庶民にはそんなプライベートバース付邸宅に住むのは夢のまた夢ですが、海岸に面したショッピングモールから乗る遊覧船なら気軽でレジャーにもぴったり。本物の海をクルージングするリアルな迫力も体感できます。
この遊覧船で使用されている船舶は日本の屋形船にインスパイヤされたというデザインなのだそうです。もしかすると発案者は訪日旅行で体験した自らの思い出をジャカルタの海で再現してみようと思ったのかもしれません。さすがに天ぷらはないものの、そんなテイストからもちょっとした小旅行気分が味わえます。
クルージングのおすすめは夕暮れ時の出港。日中、夜景、運が良ければ夕日も見られます。訪れた日にも子ども連れの家族やカップルなど数組の乗客が乗船時間を待ちわびていました。いよいよ出港。船が桟橋を離れると大はしゃぎなのは子どもよりも大人たち。あっちに座りこっちに立ち、様々な角度とポーズで大撮影会です。夕暮れ時の空はめまぐるしく七変化。360度海からの景色はどこを切り取っても映える瞬間です。
熱い湿った空気が心地よい夜風に変わりあたりが暗くなると、一通り写真を撮り終えた乗客たちもそれぞれの世界へ。
視線の先はすっかり暗闇の果てとなった夜のしじまのジャカルタ湾です。ゆらゆらと心地良く揺れる波と機械的なモーター音。空の黒さと遠くのイルミネーション。
騒めきと静寂と煌びやかさと暗黒が混在する時空間に迷い込んだような非現実的なひとときにみんな何を思っていたのでしょう。皆さまは何を思うのでしょうか。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)
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