緑と水が命に潤い PIK アンケ自然観光公園

 「スカルノハッタ国際空港はね、パイロットにとって世界でも離発着が難しい空港のひとつなんですよ」。20年ほど前に航空会社の方から聞いたお話です。「バードストライクの危険があって冷や冷やです……」。ああ、なぁるほど、確かに鳥が多いもんなぁ。コクコクと頷きながら納得したことを覚えています。当時、「何もない」と言われていた空港周辺エリアはマングローブと湿地に覆われた水鳥たちの楽園でした。あれから約20年、今回のおすすめ観光情報は開発が進むこのエリアで自然環境の保護再生に取り組む、アンケ自然観光公園(タマン・ウイサタ・アラム・アンケ・カプック)を紹介します。

 アンケ自然観光公園は開発著しいエリア、パンタイ・インダー・カプック(PIK)にある、マングローブの森とそこに生息する動植物の保護再生を目的とした公園です。
 かつてスカルノハッタ国際空港からジャカルタに向かう道路の左右には、マングローブの森や湿地を利用したエビの養殖場が連なっていました。海面より低い道路は雨季には幾度となく冠水し飛行機に乗り遅れる事態も起こるほど。現在では道路整備がなされ、そんな心配も減りました。また、開発が進んでくると、湿地や海岸は埋め立てられて人工的に整備され、進行開発地区らしく流行最前線のカフェやショップが立ち並んで、私たちジャカルタ在住邦人の暮らしをより華やかに楽しませてくれています。
 その一方、飛行機にぶつかったりエンジンに入り込んだりするのではないかと、パイロットを悩ませるほどたくさんいた水鳥たちやその生息地は、すっかり減少してしまいました。それではいけない、貴重なマングローブの森と生息する動植物を守らなくては。持続可能な都市開発とともに自然の大切さを次世代に伝承しなければ。そんな取り組みをしているのがアンケ自然観光公園です。
 公園に入り50メートルほど歩くと休憩所や子供の遊戯施設などがあるちょっとした広場に到着します。そこから板や竹でできた桟橋の遊歩道を通ってマングローブの森も散策や観察ができます。イキイキとした濃い緑色の葉や今にもポトンと落下しそうなツヤツヤの種は生命力がみなぎっています。強い日差しに照らされながらも優しい日陰を作り、水中の生物やお邪魔している私たちニンゲンをも守ってくれているようです。緑と水が、ただそれが存在するだけで命に潤いを与えてくれる何よりも貴重なものなのだと、こんな当たり前のことに今更ながらはっとさせられました。
 桟橋を奥に進んだところに森を一望できるテラスがあります。あまりの気持ちよさに大きく伸びて見ると、たくさんの鳥たちが大空を舞っています。数年前ここを訪れた時よりゴミも減り、まだ数十センチだった苗木が立派に成長し木々の数も増えているようです。一時は危機的なほど破壊されていた環境が保護活動の成果を上げ確実に改善されている証です。水辺には何やら巨大な生き物も。オオトカゲかはたまたまさかワニだったのか、近視の筆者には見分けがつきまでんでした。あれはなんだったのだろう……。心に謎を秘めたまま次回来る時まで楽しみを取っておくことにしました。
 週末の息抜きやお疲れ気味の心身のリセットとして、また、環境問題を考える教育の場としてもおすすめのアンケ自然観光公園。皆さまも謎の生物に出会えるでしょうか。ぜひ足を運んで探してみて下さい。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)

◇PT. JABATO INTERNATIONAL
電話 021・520・2091
メール sonoko_mizugaki@jabatojkt.com

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