【顔】 好きな場所、好きな仕事 スラマット・ヌグロホさん(28)
インクを浸しては、筆を動かしていく。老舗家具屋がひしめき、日陰が多いピントゥ・ブサール・スラタン通り(西ジャカルタ、旧市街コタ・トゥア)。背中の車道では、車が砂ぼこりを上げる。
毎日午前8時から午後6時までひたすら描き、1枚30万ルピアの絵を仕上げる。1カ月の売上は300万―500万ルピア。故郷の中部ジャワ州ウォノソボ県に近い同州スラカルタ市(ソロ)での活動を経て22歳の時、高収入を得るためジャカルタにやって来た。
14歳、中学校の授業で出合った絵画。趣味が高じて画家になった。描く対象物として、一番好きなのが人間だ。老人のきめ細かい皺(しわ)の一つ一つには、人生の深みを感じる。1年に1度帰郷するレバラン(断食明け大祭)休みでは、地元のカンプン(下町)に暮らす老人を描いて過ごす。
西ジャカルタの観光地、ファタヒラ広場を目指す人が歩いてくる。絵に向き合う自分に声を掛け、大切な人の肖像画を依頼していくカップルや家族。活動拠点の通りは妻と出会った場所。好きな場所で、きょうも好きな仕事を自由気ままにやっている。(上松亮介、写真も)