【留学フェア特集】 高まる日本留学熱 「安い学費」宣伝不足 「英語で履修」は魅力

 インドネシアの学生に日本の大学や大学院、語学専門学校への留学を呼び掛け、日本留学を促進しようと、十月八、九日、東ジャワ州スラバヤのシェラトン・ホテルと中央ジャカルタのジャカルタ・コンベンション・センター(JCC)で、第十七回日本留学フェアが開催される。高度成長を遂げる新興国として注目を集めるインドネシアでは、増加する富裕層を中心に日本をはじめとする海外留学熱は高まるばかり。日本留学志望者の状況などについて、留学フェア主催者の日本学生支援機構(JASSO)ジャカルタ事務所のフェラワティ代表に聞いた。
 フェラワティ氏は「この一年で活発化した新しいトレンド」として、独自にインドネシアを訪れ、高校や大学を回って留学生誘致のための留学説明会を開く日本の大学が増えていると指摘する。
 ジャカルタなど首都圏やバンドンなどの名門高校や大学を回り、学校紹介のイベントを開催し、優秀な学生に声を掛ける。「もっと盛んに行われるようになれば、日本の大学に対する親近感が沸くだけでなく、近隣諸国や欧米の大学などとじっくり比較するための情報が得られるようになると思う」と話す。
 都市部の高校生やその保護者には、高校に入学した時点か、中には中学のうちに留学に関する情報収集を始める人も増え、留学するために学習方法も合わせていく傾向があるという。
 課題は「日本は授業料も物価も高い」という印象をいかに変えていくか。「旅行で日本を訪れ、外国人の多い観光地の値段の高いレストランなどで食事し、その印象で高いという見方が一人歩きしている。しかし、都市部と地方では必要となる生活費も異なる。学生は都市部の学校に目が向きがちだが、地元の人々との交流など、地方でしか得られないものも数多くある」
 フェラワティ氏は、日本の日本の国立大の授業料の年額が約六千万ルピア(標準額の五十三万五千円)に過ぎず、米国や豪州、シンガポールの大学と比べても高くないことを知らせるだけで、有力な選択肢となることは間違いないと強調。このような情報でさえ、一般の高校生には伝わっていないのが現状だという。
 「国内でもドル払いの大学があるほか、例えば国立大でも、初年度で五千万、六千万ルピア以上かかる学校、学部もある。入試方法も多様になり、高額の授業料を課す別枠入試もある。国内の大学と海外留学の差も縮まっている」
 私費留学を考えるインドネシアの学生は、急成長中の富裕層に属する。「日本でインドネシアの学生は『苦学生』のイメージが根強いのかもしれない。留学生に招かれてインドネシアを訪れた日本人が、ベンツで空港に出迎えられて驚いたという話もある」。ただ富裕層は、自ら煩雑な留学手続きをしようとしないため、大学が代理業者と提携する必要があると強調した。
 フェラワティ氏は、国際化拠点整備事業(G30)で、日本語のハードルがなくなり、英語で四年制の大学の授業を履修できるようになることは大きな魅力だと強調する。これまで日本語習得に一年以上費やしていた時間が短縮されるだけでなく、日本で特定分野の知識を学びたいという学生に門戸が開かれることにもなると期待する。
 「静岡の大学のように、最初の一年間を日本語習得に充てながら、補修ではなく単位としてこれを認めるという制度を導入した学校もある。日本語能力がゼロの外国人学生に対し、効率よく日本語を習得してもらうため、カリキュラム面でさまざまな工夫をしていく必要性も高まっている」と指摘する。 
 日本の技術を学ぼうとする理系学生は依然として多いが、近年は日本で学びたいと思う分野も多様化し、アニメやマンガ、アートをはじめ、マネジメントなどにも人気が集まっているという。
 「保護者にとって日本は、同じアジア文化圏で治安面でも安全な国と映っているほか、今回の震災であらためて規律正しい国民性が注目された。放射能に対する不安があるのは事実だが、日本が留学先として魅力的であることに変わりはない」
◇国際化拠点整備事業(G30)
 文部科学省が実施する大学支援事業。日本の国際競争力向上を図るのが目的。福田康夫元首相が提唱し、30万人の優れた外国人留学生を日本の国公私立大学に招く「外国人留学生30万人計画」の一環で、国際化拠点大学に13大学を採択、英語のみでの学位取得などを海外にアピール。しかし、行政刷新会議の事業仕分けで「予算縮減」対象になり、13大学や有識者らが反発。昨年末に組み立て直しで予算を獲得し、取り組みは継続されている。

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