【顔】 下町で果物売って30年 スクムト(63)

 「お父さん、冷えたのちょうだい」。昼休憩のサラリーマン、近所の顔見知りが冷えた果物を買っていく。午前7時、伝統市場で新鮮な果物を探し、売り切れるまで通りに立つ。中央ジャカルタの下町、クボン・カチャン。果物売りの最長老として、知られている。
 中部ジャワ州ブルブス県ワナサリ郡シアスム村出身。30年前、ブブール・アヤム(鶏肉入りのおかゆ)などの行商として各地を転々。高い収入を求め、首都ジャカルタに行き着いた。当時、クボン・カチャン近くのプラザ・インドネシアは空き地。高いビルは数えるほど。車も少なく渋滞はなかった。1998年の五月暴動など、大きく揺れた時代を見てきた。
 スイカやパパイヤ、ドラゴンフルーツなどを小さく切り、1パック7000ルピア。1カ月の稼ぎは、約200万ルピア。現在、タナアバンの借家で行商仲間と暮らす。シアスム村の家族とは離れ離れ。子ども10人が待つ故郷に、全額送る。先日、末っ子が小学校卒業試験を終えたと、五男ヒスワントさん(20)から聞いた。さびしい時もあるが、きょうも熱いジャカルタで冷えた果物を届けたい。

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