下町で祝う2人の愛 ブタウィ人の結婚式ルポ
ジャカルタの人々の結婚式はどんなものか。新郎とその親族が新婦の家を訪れ、婚姻を交わす形式のジャカルタ土着の民族ブタウィ人の結婚式に列席した。
緊張した面持ちの新郎ルクマン・ムルハキムさん(三七)。西ジャカルタのクボン・ジュルック。式場の新婦の家から百メートル前の路上で、いまかいまかと始まりを待つ。午前十時、新婦の親族一人がどたどたと走ってくる。「準備よし」。白いペチ(イスラムの帽子)をかぶった男たちが太鼓や笛でブタウィの調べを奏で、紙製のヤシの木「クンバン・クラパ」や贈答品を持った親族約百人が歩き出した。さあ、式の始まりだ。
沿道には近所から来た無数の野次馬が並び、ニワトリが列を恐れて歩き回る。白、赤、黄色の衣で壮麗に装飾された新婦の家に着くと、新郎の持ってきた贈答品が部屋にどんどん運び込まれる。シャツ、果物、生活雑貨など贈答品は女性向けのものという習わしだ。
席は男女別。男たちはじゅうたんの上にあぐらをかき、女はイスに座る。互いの親族の男たちがあいさつをする。めでたい席のせいか冗談がかなり多く、列席者がげらげらと笑う。新婦シティ・ウマヤさん(三五)はまだ奥の部屋に隠れている。新郎は列席した州宗教局の職員の指示を受けながら、婚姻届に必要事項を記述し、親族のバパ(おじさん)たちが見守る。
やがてムスリムの結婚宣誓式の「イジャッブ・カブル」に差し掛かる。がやがやしていた会場の注目が一気に集まった。新郎ルクマンさんと新婦の兄が手を握る。「私は金十五グラムとともに、シティ・ウマヤと結婚します」と新郎。「私は金十五グラムとともにシティ・ウマヤと結婚することを認めます」と新婦の兄。アッラーへのお祈りを捧げ、正式に夫婦となった。
すると、待ってましたと満面の笑みの新婦が奥の部屋から出てきた。目を合わせ、はにかむ二人。「キスしなよ」と列席者がはやしたてる。
恋人たちは婚姻届と結婚証明書にサインすると、その場で夫婦になった。ルクマンさんは息をつき、ほっとした様子。シティさんはほおが上がりっぱなしだ。
二人は半年前、友人どうしの食事会で出会った。「とってもきれいだ。アイ・ラブ・ユーだ」(ルクマンさん)「いい人だと思った」(シティさん)と互いに好印象を持ち、交際を始めた。交際五カ月を経て晴れてのゴールインとなった。
食事と歓談で式事は終わるが、式自体は夜まで開かれ、親族や友人ら訪問者は千人に達するという。みなゆっくりと食事を楽しみ、遅れてきて夫婦にあいさつする人たちが絶えない。宴はまだまだ終わらない。