初出品でダブル受賞 イの気鋭女性監督2人 映画祭「東京フィルメックス」
東京で18〜26日に開かれた国際映画祭「第18回東京フィルメックス」で、インドネシア人女性監督2人の2作品が最優秀作品賞に選ばれた。一度に2作品が選出されるのは、2000年の同映画祭創設以来初の特例措置。インドネシア映画界にとっては、コンペティション部門への初出品でダブル受賞という快挙となった。
選ばれたのは、国内で上映中のモウリー・スリヤ監督の「マルリナ・シ・プンブヌ・ダラム・ウンパット・ババック(邦題・殺人者マルリナ)」(95分)と、12月1〜8日のジョクジャ・ネットパック・アジア国際映画祭(JAFF)で国内初上映される、カミラ・アンディニ監督の「ザ・シーン・アンド・アンシーン(邦題・見えるもの、見えざるもの)」(86分)。
新進気鋭のモウリー監督は「インドネシア映画にとって価値のある受賞となった」と初受賞を喜んだ。授賞理由で「強姦などに打ちひしがれる哀れな女性を演じるのは、もうやめよう。女性自らが、新しい女性像を作ること。肉体的にも精神的にもタフな女性像を作り出した痛快な傑作」と評価された。同作はフランス、マレーシア、タイ、シンガポールとの5カ国合作。
有名監督ガリン・ヌグロホ氏の娘カミラ・アンディニ監督は「スタイルの違う2作品を選んでくれた。インドネシア映画の多様性を認めてくれたことに感謝しています」とコメント。制作に5年を費やしたという自身2作目の長編は、土地の慣習や神話、伝承、伝統、バリ文化の精神性を双子の姉と弟の生と死を通して幻想的に描いた。オランダとオーストラリア、カタールとの4カ国合作。
通常は最優秀作品賞と審査員特別賞があるが、今回は特例として最優秀作品賞を2作品にした。副賞も、優秀作品賞100万円と審査員特別賞50万円だったが、計150万円を75万円ずつに分けた。25日の授与式で、原一男審査委員長は特例措置について「評価がぴったりと並んでいて、どちらが上とも(甲乙を)付けがたかった」と説明、両作品をたたえた。
東京フィルメックスは、アジアの独創的な作品を集めた国際映画祭で、未来の映画文化発展に寄与することを目的としている。新進気鋭の監督を紹介、バックアップするほか、海外の他映画祭での話題作を先駆けて上映する。国内外の制作者と観客の質疑応答など交流の場も設けている。(中島昭浩)